葬儀

宇宙葬とは?

伝統的には、自分の死後はお墓に入り子孫に管理してもらうというのが一般的でした。しかし現代では少子高齢化や生涯未婚率の増加により、お墓を子孫代々管理していくことは年々難しくなってきています。

その解決策の一つとして知られるのが20年ほど前に始まった「宇宙葬」という散骨方法です。進歩した現代の技術によって可能になった宇宙葬は、そのスケールの大きさからも注目が集まっています。

この記事では現代ならではの散骨法である宇宙葬について概略します。

現代の新しい散骨方法。宇宙葬について知っておきたいこと

  • 宇宙葬は自然葬の一つで、宇宙に遺骨を打ち上げたり、宇宙から地上へ散骨するもの
  • 宇宙葬にはロケットに遺骨を乗せて打ち上げるものと、バルーンで成層圏から散骨するものがある
  • 20年前にアメリカで始まり、著名人の遺骨も打ち上げられた
  • バルーンで打ち上げて散骨するタイプであれば、日本で行うことができる
  • 宇宙葬の費用は、人工衛星で地球の軌道上を周回するプランならば30万円程度
  • 墓地の継承に悩むことなく、費用が比較的安いといったメリットがある
  • デメリットは、日本国内ではロケットを打ち上げられない、親族の理解を得られない場合があることが挙げられる
  • 宇宙葬では人工衛星に搭載するためスペースデブリにはならず、法律上の問題もないという見解が出ている

宇宙葬とはどんな葬儀形式か?

宇宙葬という言葉からどんなイメージを持たれるでしょうか?

葬儀が終わった後の遺骨は墓地に納骨して、先祖代々の墓を子孫が守るというのが昔から当然のように行われていましたが、最近では、さまざまな納骨の形式を選択できるようになりました。

少子化が進み、自分の墓を守ってくれる子孫がいないとか、先祖代々墓を管理してくれる親類がいないという問題が増えてきてから、共同埋葬の形式や自然葬の形式が見直され、自分の納骨は自然葬で行って欲しいと希望する人が増えています。

宇宙葬も自然葬の形式の一つで、遺骨を宇宙に打ち上げたり、宇宙から地上へ散骨するものになります。以前は、宇宙葬を希望する場合、海外の業者に依頼するしかありませんでしたが、最近では日本でも宇宙葬を取り扱う業者が増えてきました。

宇宙葬のタイプは2種類

宇宙葬のタイプは大きくわけて2種類あります。どんな葬儀形式なのか紹介します。

ロケットに遺骨を乗せて打ち上げる

遺骨を小さなカプセルに納めて、ロケットで宇宙へ打ち上げる形式になります。

ロケットで打ち上げた後は、葬儀のプランによって異なり、ロケットの推進力を利用して永遠に宇宙の果てへと旅をし続けるプランや、人工衛星として地球の周囲を回るプランなどが用意されています。

バルーンで成層圏から散骨する

ロケットで打ち上げるプランよりも比較的新しいものがバルーンによって成層圏まで遺骨を上げてから、空中で散骨する形式です。ロケットでの打ち上げの場合は、地球から飛び出して宇宙に到達していますが、バルーン葬の場合は、地球から出ることはありません。

ただ、成層圏に達してから散骨するので、そこを宇宙空間と捉えることで同じものとされています。

チェックポイント

宇宙葬は自然葬の一つで、宇宙に遺骨を打ち上げたり、宇宙から地上へ散骨する。宇宙葬にはロケットに遺骨を乗せて打ち上げるものと、バルーンで成層圏から散骨するものがある。

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宇宙葬はいつから行われていたか?

最初の宇宙葬は今から20年前にアメリカで行われています。

1997年4月21日に24名分の遺骨カプセルを搭載したペガサス型ロケットが地球の公転軌道に達し、軌道上を周回することに成功しました。2002年に地球上に落下するまで5年間の間、人工衛星として地球の周りを周回し続けました。

このロケットにはスタートレックのプロデューサーであるジーン・ロッデンベリーなど有名人の遺骨が搭載されたということでも話題になりました。

次は翌年の1998年に行われて、この時は1年間地球の周囲を周回して落下しています。

初期の頃は、宇宙に滞在する時間も1~5年間とそれほど長期間ではありませんでしたが、20年経過した現在では、地球の周囲を240年間に渡って回り続けるプランなどが誕生しています。最初は、宇宙に遺骨を打ち上げて周回してから落下するときに、大気圏との衝突で消失するという方法でしたが、最近では打ち上げられた遺骨をいつでも地球上からお参りすることができるといったように、申込者の意識も変わってきているようです。

チェックポイント

宇宙葬は20年前にアメリカで始まり、著名人の遺骨も打ち上げられた。

現在は地球の周囲を240年間周回し続けるプランもある。

日本でも宇宙葬の申込はできる?

現在、日本で宇宙葬を行っている業者は5社ありますが、ロケットでの打ち上げを必要とする人工衛星タイプは、日本国内でロケットに搭載することができないため、アメリカでの打ち上げに参加する形になります。

バルーンの場合は、企画している日本の事業者が日本国内から大型バルーンを打ち上げることができるので、こちらは日本国内で申込から打ち上げまで全て日本国内で行えます。

実際に行われている宇宙葬の状況

2018年の12月には100名の遺骨カプセルを搭載した、ロケットの打ち上げが成功し、一度のロケット発射で搭載できる遺骨の数も増えてきています。最近では、人間だけでなく、ペットの葬儀も宇宙葬で行えるプランも発表されて、亡くなった飼い猫の遺骨を宇宙に打ち上げる計画に対し、24万円もの募金が集まったことも話題になりました。

日本でも、野球選手として活躍した元南海ホークスの富田勝さんが、2019年の5月に宇宙葬を行いました。また、女優の島田陽子さんも生前予約されています。

宇宙葬の相場はどのくらい?

ロケットに搭載して宇宙に打ち上げることから、莫大な費用が必要というイメージがあるかもしれません。しかし、プラン内容によるものの価格は、多くの人が抱いているイメージよりもかなり安く感じるかもしれません。

人工衛星で地球の軌道上を周回するプランならば、30万円程度の費用で宇宙葬を行うことができます。ロケットを打ち上げるには莫大な資金が必要となるので、金額も高いのではないかというイメージがあると思いますが、遺骨が納められたカプセルは非常に小さいものになるので、この価格で葬儀を行うことができるということです。

月面に遺骨を散布したり、宇宙の果てまで永遠に航海をし続けるプランならば、120~270万円という価格になります。

ロケットを利用しないバルーンでの散骨であれば、価格はもっと低くなり、最安値で8万円です。

チェックポイント

宇宙葬の費用は、人工衛星で地球の軌道上を周回するプランならば30万円程度。バルーンを打ち上げるものなら8万円程度で済むことも。

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宇宙葬のメリットとデメリットについて考える

新しい葬儀の形として注目されている宇宙葬のメリットやデメリットにはどんなことが挙げられるか考えてみましょう。

宇宙葬のメリットは?

宇宙葬のメリットには、具体的に以下のような点が挙げられます。
  • 墓地の継承者に負担をかけることがない
  • 費用が比較的安い
  • 壮大なイメージがある

墓地の継承者に負担をかけることがない

人口衛星として宇宙を周回したあと、地球の大気圏に突入する時に遺骨は跡形もなく焼却されますので、遺骨を墓地などに保管する必要がないということが大きなメリットになります。墓地を管理するために親族や子孫に余計な負担をかけたくないということが宇宙葬を選択する理由の一つとなっています。

費用が比較的安い

前述したように、宇宙葬にかかる費用は30~120万円前後。バルーンならば8万円で行うことができます。墓石を購入する場合、安いものでも50万~になりますし、墓地を購入する場合はさらにお金がかかります。また納骨後も毎年管理費がかかりますので、長い期間でかかる費用を考えると、葬儀費用がかなり安いということもメリットの一つとなるでしょう。

壮大なイメージがある

日本人で宇宙に行ったことがある人は数えられるくらいしかいません。世界中を見渡しても地球から飛び出した経験がある人なんてほとんどいないでしょう。亡くなった後とは言え、宇宙に旅立てるということについて壮大なロマンを感じることができます。

遺族にとっても、わざわざ墓参りにいかなくても、空を見上げた時にいつでも故人を偲ぶことができるというのは、亡くなった人がお星さまになるということを現実にするものですからロマンチックですよね。

宇宙葬のデメリットは?

宇宙葬のデメリットは、具体的には以下の点でしょう。
  • ロケットを打ち上げるのが日本国内ではできない
  • 認知度が低いため親族の理解を得られない場合がある

ロケットを打ち上げるのが日本国内ではできない

宇宙葬を行う時に、遺骨をカプセルに納めて搭載するロケットの発射は主にアメリカで行われます。日本国内でロケットを打ち上げるわけではないので、最後の姿を見に行くのが大変であるということがデメリットとして挙げられます。

宇宙葬をおこなっている葬儀社は、遺族の方に対してロケットの打ち上げを見に行くツアーも用意しているところが多いですが、海外へのツアー料金もかかってしまいますので、見に行く場合は高額なツアー料金も必要となってしまいます。

認知度が低いため親族の理解を得られない場合がある

年々件数が増えてきているというものの、全体的な葬儀の割合からみると、まだまだ微々たるものです。そのため、宇宙葬に対して親族の理解を得られないという可能性があります。

遺骨は墓に納骨して子孫が守るものという考え方を持っている方が多いので、自然葬と同様に墓石のような参拝対象がなくなってしまう宇宙葬を理解してくれない親族の反対に遭うことも考えられます。

宇宙葬への懸念に対する主催業者の説明

宇宙葬に対して、代表的な疑問に対して主催業者はどのように説明しているのでしょうか?

スペースデブリを増やす?

役目を終えた人工衛星や、打ち上げたロケットの部品など宇宙ゴミとも言われるスペースデブリですが、打ち上げられた納骨カプセルもスペースデブリの一部となるのではないかと懸念される声も上がっています。

スペースデブリ問題は、宇宙葬のデメリットの一つと言われていますが、企画している会社からの説明によると、納骨カプセルを搭載した人工衛星は、宇宙葬の目的だけで地球の軌道上を周回するのではなく、目的があって周回している人工衛星に搭載しているためスペースデブリにはならないと話しています。

地球に落下するときに被害はないのか?

地球を周回した後に、人工衛星に搭載された納骨カプセルも地球上に落下しますが、大気圏突入の際に全て燃焼してしまうため、地上に被害を及ぼすことはないと説明されています。

また、バルーン葬で使わるバルーンは100%自然素材であるゴムの木の樹液から作られているので、地上に落下した後も土に還るためゴミになって環境に影響することはないと説明されています。

墓地以外に納骨しても法律上大丈夫?

日本の法律では、遺骨は墓地に埋葬しなければならないと定められています。しかし、宇宙葬や自然葬の場合は遺骨をそのまま埋葬するのではなく、細かく砕いて散骨するので法律上問題はありません。

ロケットで宇宙に納骨カプセルを打ち上げる宇宙葬は、一定期間散骨せずに地球の周りを周回するので、遺骨遺棄にあたるのでは?という懸念もありましたが、この件に関しても、一つの葬儀方式として節度を持って運用するならば法律違反にはあたらないという法務省からの見解が出ています。

チェックポイント

宇宙葬によりスペースデブリは増えないとされているし、地上に落下する際にも大気圏で全て燃焼するため地上への被害はないとされている。

散骨や遺骨遺棄に関して危惧する声があるが、日本の法律上も問題ないという法務省の見解が出ている。

まとめ

いかがでしたでしょうか。死後にお骨を宇宙に打ち上げてもらう宇宙葬は、現代を生きる我々に許された、非常にロマンを感じる散骨方法です。壮大なスケールながら、意外と費用が少ないと思われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし反面、宇宙葬はここ20年前に現れた新しい散骨法であるために、難しいことが多々あるのは事実です。何にでもデメリットはつきものですが、宇宙葬にも同じことが言えます。宇宙葬を考えるならば、費用の安さやスケールの壮大さなどのいい面ばかりではなく、悪い点もしっかり考慮しましょう。

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