新型コロナウイルスのワクチン接種が始まりましたが、まだ感染拡大は収まらない状況が続いています。必要急である葬儀も規模を縮小したり、リモート葬儀となったりと、さまざまな工夫によって行われています。 実際に、リモート葬儀はどのように行われているのでしょうか。親戚の葬儀で自らリモート葬儀を申し出たKさんに体験談を伺いました。
地方在住のKさんは、不運な偶然からご自分が新型コロナウイルスに感染。入院することになりました。小さい頃に家業の工場が倒産し、苦労する中で面倒をみてくれた叔父さんが、入院中も気遣ってくれたそうです。
Kさん「叔父は金銭面とか、夏休みの旅行とか、ずっと優しくしてくれました。就職したときは祝ってくれたりして。イトコとも未だに仲が良いです。幸いコロナは軽いほうでしたけど、やっぱり心細かったので、入院中の叔父の気遣いはありがたかったです。ただしばらく会えなかったのは寂しかったですが」
ご自身のコロナ療養が終わって間もない頃、その叔父さんが心筋梗塞で他界。家族すらも予期していなかった、突然の別れでした。葬儀は家族葬で行うことになりましたが、Kさんは体調が戻りきっていなかったそうです。
Kさん「コロナのせいで体力がごっそり落ちていましたし、近くに住んでいるとはいっても距離がちょっとあるんですね。さすがに病み上がりで行くのは叔父一家にも負担かなと。でも、葬儀にはどうしても参加したかったんです。一番お世話になった人でしたから」
悩んだKさんは、葬儀社に直談判。葬儀にオンラインで参加できないかと持ちかけました。最初は葬儀社は難色を示したそうです。
Kさん「リモート葬儀ができる葬儀社もあるみたいですけど、叔母が選んだところには設備がなかったんです。でも動画配信で死に顔を見るとかはイヤでしたし……僕の住んでいる地域はコロナ感染者自体が少なかったので、需要がほとんどないって最初はつっぱねられました」
諦めきれなかったKさん。叔父一家の説得もあり、葬儀社は初のリモート葬儀に踏み切ってくれました。なんと、ビデオカメラ一式を揃えてくれたそう。
Kさん「配信用の、OBSというソフトウェアがあるそうですね。それ使うことになったんですけど、葬儀社では使い方がわからない。僕も別に詳しいわけじゃなくて、困ってしまいました。ところが、従業員のお子さんにゲーム実況している子がいたらしくて(笑)全部やってくれたそうです。ずいぶん助かりましたね」
現代っ子の助けを借りて行われたリモート葬儀。迷ったものの、最後に叔父さんの顔を見せてもらうことにしたそうです。
Kさん「穏やかな顔でした。今までに励ましてもらったときとか、相談にのってもらったときの顔なんかが、バーッと蘇って。マイク切って泣きました」
リモート葬儀に関して、親戚や葬儀社からも反響があったそうです。
Kさん「葬儀社の方も、今後取り入れることを検討するって仰ってました。叔母も、叔父が喜んでいるよって言ってくれて。自分も今まで、リモート葬儀に対してぴんと来ていなかったし、正直違和感もありました。ワガママで押し通したみたいな引け目もありましたしね。でも、叔父の顔を見た時、やってよかったと感じました。体調が復帰したら、線香をあげにいきたいです」
葬儀業はガイドラインに従い、感染予防策を講じて葬儀を行っています。しかし感染リスクはゼロにならないもの。自分や参列者、全員のリスクを下げられるのがリモート葬儀です。人とのつながりは、コロナ禍でも失えないもの。今後コロナ禍が落ち着くまでは、リモート葬儀での参列を検討してみるのも良いかもしれません。
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