遺言書に対して、「お金持ちだけのもので自分には必要ないもの」と思っている方もいらっしゃいますが、比較的少額の相続であっても相続トラブルは多く発生しています。そのため、遺言書のメリットや必要となるケースをしっかりと知っておくことが重要です。
このページでは、遺言書を作成するメリット、遺言が必要となる人について解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
まずは、遺言書を作成することのメリット5つを箇条書きで紹介します。
遺言が必要な理由を簡単に説明すると、遺言者の意思を明らかにしておくことで、相続人が争うことなく相続手続きを進めることができるようにするためです。
「相続は争族」などと言われることもあるように、相続は紛争になってしまうことも多く、ずっと仲が良かった兄弟ですら相続で争ってしまいその後の関係が悪いままになってしまったというケースもあります。せっかく残した財産が争いの原因になってしまうというのは、とても悲しいことです。そのため、専門家に依頼して事前にしっかりとした遺言書を作成することが、円満な相続のために必要となるのです。
相続は大きなお金がからむことでもあり、相続人それぞれが強い想いを持っていることから、どうしても争いになってしまうことも多いです。相続トラブルをきっかけに、相続人である兄弟姉妹などの仲が悪くなってしまうことは避けたいことだと思います。
遺言書をしっかりと作成しておくことで、どのように財産を分けるべきかが相続人にも伝わりますので、争うことなく相続手続きをすすめることができます。
遺言書を作成することによって、遺言者の希望通りの相続を実現することができます。
たとえば、遺言書で決めた相続額は法定相続分より優先されますので、老後の面倒をみてくれた息子に多く財産を残すこともできます。また、子どものいらっしゃらない夫婦の場合には、遺言書を作っておくことで、自分の兄弟ではなく妻に全ての財産を残したり、第三者に財産を遺贈することも可能です。
遺言書に書いたとしても、遺留分など法律の制限で認められない範囲もありますが、遺言書を作成することで相続トラブルを回避しつつ、思い描いたとおりの相続を実現できるといえるでしょう。
遺言書がない場合には、相続人全員が話し合って遺産の分配額や方法を決めなければなりません。これを遺産分割協議といいますが、専門家が入っても話し合いが必ずしもまとまるとは限りませんし、相続人が遠方に住んでいたり、連絡のとれない相続人がいたりする場合もあります。そのため、遺産分割協議を成立させるというのは大変な労力が必要になります。
遺言書を作成している場合には、相続人が遺産分割協議をする必要がなくなりますので、相続人も争うことなくスムーズに相続を進めることができるようになります。
遺言執行者とは、遺言書の内容に沿って相続の手続きを代わりに行い、遺言者の意思を実現する人のことをいいます。遺言書の作成を弁護士などの専門家に依頼している場合には、その専門家を遺言執行者として指定している場合が多いです。
遺言執行者が指定されている場合には、複雑な相続手続きを遺言執行者が中心となって行いますので、より確実に遺言者の意思を実現することができます。また、相続人の負担も大幅に減少します。
遺言書に記載することで、相続権がない相手にも財産を残すことができます。
たとえば、事実婚という形で婚姻届を出しておらず、内縁の夫、内縁の妻という関係にある場合、内縁関係の相手には相続権がありません。そのため、内縁関係にある相手に財産を残したい場合には、遺言書の作成が必要になります。
また、ペットを飼っており自分一人で世話をしている場合には、そのペットに財産を残したいと考える方もいらっしゃいます。遺言書に記載したとしてもペットに直接財産を相続させることはできないのですが、ペットの世話を条件に財産を第三者に遺贈することが可能です。
では、具体的にどのような場合に遺言書が必要になるのでしょうか? 遺言書を作成しておくことが特に重要となるケースを10パターン紹介します。
それぞれ理由も含めて簡単に解説をします。1つでも当てはまる場合には、専門家に相談して遺言書を作成することをおすすめします。
相続人の数が多い場合には、どうしても争いになってしまう可能性があります。財産が少ない、兄弟仲がいい、などの事情があったとしても、相続トラブルになってしまうケースは後を絶ちません。
複数の相続人がいる場合には、相続をスムーズに進めてもらうためにも、遺言書を作っておくといいでしょう。
子どもがいない夫婦の場合、夫が亡くなったとすると妻に財産は全額いくものだと考えている方も多いでしょう。しかし、夫に兄弟がいた場合にはその兄弟も法定相続人になります。そのようなことを避けるためにも、「妻に全財産を相続させる」という遺言書を残すことが重要になります。
不動産は分割することができないようなケースも多いですし、住んでいる相続人がいれば売ることも難しくなってしまいます。そのため、相続財産に不動産がある場合には、遺産分割協議が進まずに相続トラブルに発展してしまうことも多いです。
相続財産に不動産がある場合には、家族や専門家と事前に話し合った上で、不動産の扱いを記載した遺言書を作成しておくことが有効です。
相続人がいない場合には、相続財産は国のものになります。お世話になった人に相続してもらったり、寄付をしたりすることを望む場合には遺言書が必要になります。
再婚している方で先妻に子がいる場合には相続はとても複雑になります。なぜなら、相続人は、再婚した新しい奥さんと、先妻の子どもとなるからです。この場合、相続人同士が元々お互い良く思っていないことが多いので、トラブルに発展することが多いといえます。
内縁関係は社会保険の扶養にいれることができるなど、法律上でも妻と同様の扱いを受けることができる場合もあります。しかし、内縁の妻には相続権はありません。そのため、内縁の妻に相続をさせたいと考えている場合には、その旨を遺言書に記載しなければなりません。
さまざまな事情から、生前に認知できなかった子どもがいる場合には、そのままですとその子どもに相続権はありません。しかし、遺言書で認知することでその子どもに財産を相続させることもできますので、認知していない子どもにも相続させたい場合には遺言書に記載しましょう。
子どもが亡くなった後や、子どもと離婚した後にも、子どもの結婚相手が面倒をみてくれているようなケースもあると思います。そのような場合に、子どもの結婚相手には相続権がありませんので、財産を残したいと思った場合には遺言書の作成が必要となります。
ペットを飼っているが、もしそのペットのお世話をしてくれそうな家族がいないというケースもあると思います。そのような場合には、遺言書に記載をすることで、ペットの世話をすることを条件に家族以外の人に遺産を相続させることができます。
残念ながら、法律上ではペットはあくまでも「物」ですので直接相続させることができません。そのため、このように条件付遺贈という形をとることになります。
会社を経営していたり、個人事業を営んでいる人で事業承継をする場合には、遺言書が必要となります。
仮に相続人の1人に会社を継がせたとしても、もし遺言を作成していなければ、経営している事業に必要な不動産や機械や、株式などについても、そのほかの遺産を同じように複数の相続人で平等に共有することになります。会社を引き継いだ相続人としては、事業に必要な財産を自由に使うことができなくなり、経営が上手くいかなくなってしまうことも考えられます。そのような事態を避けるためにも、事業に関係する財産の分割方法を遺言で決めておく必要があります。
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