仕事を退職すると、今まで貯めてきたお金や納めてきた年金で暮らしていくことになります。
しかし存命中に予定された年金を満額受け取れるかは分からないもの。
もし受け取れていない年金があったらどうすれば良いのでしょうか。
遺族がその年金を相続したら税金はかかるのでしょうか。
この記事では、年金の未収金を相続する時の税金について説明いたします。
この記事のポイント
相続では、年金が相続税の対象になるかが問題となります。
一般的に、死亡時点で未収金になっている保険金は相続税の対象となります。
しかし、未収金は誰のものに該当するかという点で特有の考え方があるため注意が必要です。
公的年金と私的年金では、相続税の課税に対する考え方が異なるため、混同しないように注意してください。
国民年金や厚生年金などの公的年金は、偶数月の15日に前月と前々月分が一括で支給されます。
支給は翌月移行になるため、必ず未収金が発生します。
遺族が受け取る未収金は財産として引き継ぐため、一見、相続税の対象になるように思われます。
しかし、実際は相続の対象にはなりません。
その理由は、公的年金は受給者と家族の生活を保障するためのものであるため、課税対象ではないのです。
まずは、偶数月に亡くなった場合について解説します。
4月22日に死亡した場合は、6月15日に4月分が支給されます。
次に、奇数月に亡くなった場合について解説します。
5月22日に死亡した場合は、6月15日に4月・5月分が支給されます。
年金受給者が亡くなった後に「年金受給権者死亡届」を提出します。
死亡届の提出先は、年金事務所または年金相談センターです。
速やかに手続きを済ませなかった場合、年金の不正受給になるため、速やかに手続きを済ませましょう。
必要な届出 | 添付書類 | 様式 |
死亡の届出 | 故人の年金証書 戸籍妙本・死亡診断書・死亡届の記載事項証明書 | 年金受給権者死亡届 |
未支給年金請求の届出 | 故人の年金証書 戸籍謄本等 世帯全員の住民票 金融機関の通帳 生計同一についての別紙の様式 | 未支給請求書 |
なお、日本年金機構にマイナンバーを登録済みの方は、上記の手続きを省けます。
死亡届を提出する際の注意点
未収金は一時所得に該当するため確定申告が必要です。
確定申告漏れをした場合は脱税になってしまいます。
そのため、確定申告時には受け取った金額を必ず確定申告で申請するようにしましょう。
支給金を受け取る年分において、一時所得の金額の合計額が50万円以下である場合には確定申告が不要です。
(一時所得には50万円の特別控除があるため、未収金だけで課税されることは少ないでしょう。)
遺族基礎年金とは国民年金に加入していた方が亡くなった際に、配偶者などがもらえる年金のことです。
支給条件は、被保険者が生活を維持して、家計を支えていたということです。
子供が希望する場合、18歳未満か20歳未満、障害年金を受給、等級が1級か2級であることが必須です。
遺族年金の受給権も遺族固有の権利ですので、遺産分割の対象とはなりません。
また、相続税もかからないのです。
遺族の最低限の生活を保障するという目的のものなので、相続税の対象外となるのです。
他に収入がある場合や遺族が自分の年金を受給している場合も、完全に非課税です。
その他、寡婦年金・死亡一時金も遺族年金と同じく非課税です。
【遺族年金の手続きで提出する書類】 | |
年金請求書 | 住所地の市区町村役場、年金事務所 年金相談センターなどでももらえる |
年金手帳 | 提出できない場合は、その理由を述べる |
世帯全員の住民票の写し | 死亡者との生計維持関係、住民票コード確認のため必要 |
死亡者の住民票除票 | 世帯主全員の住民票の写しに含まれている場合は不要 |
請求者の収入が確認できる書類 | 生計維持認定のため必要 |
子供の収入が確認できる書類 | 義務教育終了前は不要 |
死亡診断書のコピー | 死亡の事実および死亡年月日の確認のため |
受取先の金融機関の通帳 | 預金通帳の確認のため |
印鑑 | 認印でも可能 |
私的年金は、相続税の対象になります。
企業年金は、公的年金の支給を補う目的で勤務先の会社から支給される私的年金です。
企業年金は相続税の課税対象となります。
しかし、在職中と退職後の年金受給中に亡くなった場合では、課税される範囲が異なります。
在職中に死亡した場合は、企業年金は死亡退職金として支給され、相続税の対象となります。
しかし、500万円×法定相続人の人数の金額の範囲であれば、税金はかかりません。
企業年金の未収分は定期金に関する権利として、相続税の対象になります。
死亡退職金のように非課税限度額は適用できないため注意してください。
定期金に関する権利の価額は
のいずれか多い金額で評価します。
被保険者が亡くなられた場合は、その旨を速やかに連合会にご連絡ください。
連合会から「企業年金連合会老齢年金受給権者死亡届」が送られてきます。
そして、必要事項を記載して、年金証書を添付して連合会に送り返します。
連合会では、死亡届を受付してから、当該書類の審査・処理をします。
その後に「失権通知書」を送付する流れとなります。
手続きには2か月~3ヵ月ほど要します。
【死亡届の郵送先】
〒105-8772東京都港区芝公園2-4-1芝パークビルB館10階
企業年金連合会年金サービスセンター年金相談室宛
個人年金とは、保険会社と被保険者で契約をして、保険金を年金として支給してもらう形態を言います。
個人年金は、生きている間に保険金を受給できるものと、死亡保険金として支給されるものがあります。
それぞれ、相続税の対象になるため注意しましょう。
個人年金の場合、相続税を計算する基になるのは「年金受給権」です。
年金受給権は、
の3つの中で、総額が高いものが相続財産とみなされます。
相続税対策に使えるかどうかは、保険契約内容によって異なります。
しかし、存命中に個人年金を受け取ることができれば、その一部を所得税の計算から控除されます。
被保険者が亡くなった場合は
を行います。
なお、必要書類や手続き方法は、保険契約の内容によって異なるため、保険会社に相談をしましょう。
個人年金では、一定期間の支給期間内であれば、年金が支給されるものがあります。
このような形態の年金では、未収金が高額になることもあります。
例えば、支給期間が15年あり、受給者が5年目に死亡した場合は、10年分の年金が未収金となるのです。
未収金が高額になる場合は、相続税の税額計算に大きな影響を及ぼすことになるため、注意してください。
こ税理士に相談するメリット
相続をする場合は、さまざまな法律が影響しています。
そのため、知識がないまま手続きを進めてしまうと不正受給などのペナルティを受けてしまうことも。
また、どのようにすれば、税対策につながるかも親身に相談に乗ってもらうことができるでしょう。
実際に、死亡届を7日以内に提出しなければ、ペナルティの対象となります。
このようなことを防ぐためにも、税理士などの専門家に相談をしてみてください。
税理士に相談するメリットには上記のようなものが挙げられます。
相続税申告に係る事務書類の整理には、税理士の方が代行する場合でも時間がかかります。
このような手続きを素人が行おうとすると莫大な時間がかかってしまうかもしれません。
このような手続きの手間を省くためにも税理士に依頼してしまった方が楽でしょう。
相続税の申告においては、相続税が減額できる控除制度が多数存在します。
控除制度は厳しい要件が設けられており、一般の人が計算するにはハードルが高いです。
税理士であれば、要件を満たしているかを細かくチェックして、控除制度を適用してくれます。
余分の多く納めた税金は、一定期間を過ぎると戻ってこなくなってしまいます。
多く払い過ぎていることに気付ける機会すらないかもしれません。
少なすぎる納税は、税務調査後の追徴ペナルティを招きます。
本来の税額に数割のペナルティが上乗せされることとなります。
申告日より最長7年間は、税務調査により細かなチェックをされる可能性があります。
しかし、その時の立ち会ってくれるのが税理士です。
税務署との建設的な協議の上、誰もが得心のいくところに話を落とし込めるのは税理士ならではです。
この記事のまとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は、未支給年金に関する税金や手続きの方法についてのお話をしました。
人間生きていれば、いつかは働けなくなる時が来て、そしてこの世に別れを告げる時が来ます。
しかし自分がいなくなった後も、遺族は生きていかねばなりません。
受け取れなかった年金に関して、しっかりと知識を持っておきましょう。
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