仏壇は本来一家に1つあるものとされてきました。読者の皆さんにも、自宅に仏壇がある、自宅にはなくても祖父母の家に行ったら仏壇に手を合わせていた、という経験のある人もいることでしょう。しかし昨今では少子化などの問題から両親の家から1つずつ仏壇を受け継ぎ、家に仏壇が1つ存在してしまうということも見られるようになりました。
仏壇は、家に2つあっても大丈夫なのでしょうか。1つにまとめたいときはどうすれば良いのでしょうか。この記事が解説します。
一般的に、一世帯に2つの仏壇を設置することは好ましくありません。2つ設置すると、ご先祖様が安らげないという理由と、宗派が異なる場合は、同じ場所に設置することは避けるべきという理由があるからです。地域によっては、2つの仏壇を設置することを禁止しているところもあります。
そのような決まりがあるにも関わらず、少子高齢化が原因で、祭祀財産を承継するものがいなくて、両家の仏壇を引き継がなければいけないという世帯の方が増えているのです。両家の仏壇を引き継がなければいけなくなった場合は、設置場所にも困ります。インターネットの悩み相談では「両家の仏壇を引き継ぐことになってしまったけれど、一緒に設置をしても良いのかどうか」という悩みが多いです。高齢化社会の現代では、両家の仏壇を引き継がなくてはいけないケースが増えてきて、それが一般化してきているようです。
2つの仏壇を引き継ぐことが多くなった現代ですが、2つ設置することになった場合には、さまざまな注意点があります。ここでは、2つの仏壇を設置する場合の注意点と、管理する上でかかる負担についてご紹介します。
具体的な注意点は、以下の通りです。
両家の仏壇を引き継がなければいけなくなった場合、同じ部屋に設置すると、双方のご先祖様は安らげません。また、宗派が異なる場合は、法要の用事で訪問してくれる住職の方に気を遣わせないためにも、別々の部屋に設置することが推奨されていまいます。
しかし、住んでいる部屋が広くなくて、別々の部屋に設置することができないという方もいるでしょう。どうしても同じ部屋に設置をしなければいけない場合は、仏間や床の間に東向きに揃えて設置しましょう。
マンションに住んでいる方や、戸建ての1階に仏壇を置く場合など、上に部屋があるところに設置することもあるでしょう。このような場合は、仏壇の上には何もないことを意味する「雲」「天」「空」のいずれかの文字を書いた紙を貼ります。このように記載することによって「神様は最上です」という敬意を示せます。
ご年配で昔ながらのしきたりを大切にする方であれば、2つの仏壇を設置することに対して、苦言を呈する人もいます。そのような親戚がいる場合は、相手の気持ちや価値観を考慮して、ジックリと話し合いをして同意を得るように心がけて下さい。
また、基本的には嫁いだ先のものを守らなければいけません。そのため、もう一方の仏壇は置かせてもらえることに感謝しながら、設置をしましょう。嫁いだ先に対して「同じ家に置かせて頂きます」という気持ちを持つことが大切です。小ぶりな仏壇を選ぶなど、嫁ぎ先に対して配慮が必要です。
2つ設置するということは、各仏壇ごとに供養や回忌法要を行わなければいけません。そのため、仏壇を所有することで負担も2倍になるということを理解しておきましょう。後述をしますが、負担を減らすためにも、仏壇を1つにまとめてみる方法も検討してみましょう。
2つの仏壇を1つにまとめるときは、宗派が同じである場合と異なる場合で変わってきます。
どちらの宗派を選ぶかなどを考える必要がないため、比較的、簡単に1つにまとめられます。
異なる宗派を祀ることは好ましくありません。どちらの宗派で統一するかを決めた方が良いでしょう。そうすると片方の寺院とは縁を切る形となってしまうため、家族や親せきの人を含めて良く相談して決めて下さい。
また、仏壇を1つにまとめた後は、片方は不要となるため、処理しなければいけません。仏壇の処分は、そのまま破棄すれば良いというものではなくて、寺院にシッカリと相談をした上で、魂抜きをしてもらう必要があります。ご先祖様たちが祀られていたため、しかるべき作法を守り処理しましょう。
2つの仏壇の宗派が同じなら比較的簡単にまとめられるが、宗派が違う場合は宗派を統一(=片方の神社を縁を切る)する必要があるため、話し合いが必要。
仏壇の処分を行う前に、購入したときに開眼供養が行われたかどうかを確認します。「開眼」とは、仏様の目を開くという意味があり、霊験ある尊像に生まれ変わるために大切な儀式です。宗教や地域によって考え方は異なりますが、この開眼供養を行った場合は、処分前に閉眼供養を行わなければいけません。
閉眼供養とは、ご先祖様の魂を抜いて、仏壇の役割を終わらせるという目的の法要です。この閉眼供養を行わずに処分してしまうと、魂が入ったまま処分することになるため注意して下さい。閉眼供養は、基本的に寺院の僧侶の方に依頼します。
お布施代・お車代・御膳料を用意することが一般的ですが、近頃は、御布施代のみ受け取る寺院が多いようです。御布施代は、地域や寺院によって異なりますが、数万円~10万円くらいが一般的な相場となります。価格が気になる場合は、寺院に直接相談をしてみて下さい。
閉眼供養をした仏壇は処分しましょう。処分の仕方には、以下の5つの方法があります。
ご先祖様のお墓がある場合や、檀家になっている寺院があれば、仏壇の引取りをその寺院に依頼するのがスムーズです。このようにご先祖のお墓がある寺院のことを、菩提寺と呼びます。菩提寺や檀家を持つ寺院と聞くと、一見さんはお断りの印象を持つ方もいますが、閉眼供養から仏壇の引取りまで行ってくれる寺院があります。すべてを寺院に任せることができるため、手間がかからず、心理的にも安心感が得られるでしょう。
しかし、寺院に引き取ってもらう場合の費用の相場は分かりにくくなっています。そのため、寺院に直接相談をしてみて下さい。
菩提寺が良く分からない場合や、菩提寺に交渉することに抵抗がある場合は、仏具店に引取りを依頼する選択肢もあります。仏具店では、新品の仏具や仏壇などを販売するほかに、古いものを引き取ってくれるサービスも行っています。費用は多めにかかってしまいますが、菩提寺に依頼しにくい場合は、仏具店に引き取ってもらうようにしましょう。また、新しく仏具を揃える場合は、下取りの形で処分してもらえます。
代々伝わる仏壇の場合など、美術的価値が高そうな場合は古美術商(骨董屋)に相談してみて下さい。買取価値があると判断された場合は、梱包や配送などにかかる費用も負担してくれます。買い取り実績が豊富な場所だと、取り扱い知識が豊富にあるため、安心して処分できます。
近頃は、ネットオークションで簡単に売ることができます。基本的には、中古の仏壇を購入しようと考える人は少ないため、自分で価格を決めて取引をすることになります。このときの価格設定は、梱包や配送にかかるコストを踏まえた金額設定をすることが大切です。
閉眼供養を行った仏壇は、宗教上では、単なる木の箱です。そのため、地域の粗大ごみとして収集して出すことも可能です。粗大ごみとして収集依頼することになりますが、細かく解体したものは、木は燃えるごみとして、金具は不燃ごみとして出せる場合もあります。粗大ごみとして扱うのか、燃えるごみとして出せるのかは、地域のごみ収集のルールを確認して従って下さい。
仏壇を処理をするときは、閉眼供養をお願いして先祖の魂を抜いてもらうことが必要。
閉眼供養の後は、寺院や仏具店に引き取ってもらったり、古美術商やネットオークションに売りに出したり、粗大ごみとして回収してもらう方法がある。
いかがでしたでしょうか。今回は仏壇を2つ置くときの注意点や、1つにまとめるときの注意点などについてお話ししました。
仏壇にはご先祖様の魂が祀られているため、おいそれと処分するのは難しいのが実情です。かといって2つ所持するのも少し荷が重いかもしれません。寺院や家族と話し合いながら、それぞれのご家庭で最適なやり方を探すしかなさそうです。
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