相続

遺産分割の方法とトラブルにならないようにするためにできること

遺産分割の方法とトラブルにならないようにするためにできること

亡くなった人の財産は、配偶者や子どもなど相続人と呼ばれる人たちが継ぐことになっています。家などの不動産や現金など、生きている人たちが引き継ぎ管理することで、有効に使うことができます。

一方で、遺産分割に関するトラブルは後を絶たず、メディアでも定期的に取り上げられています。遺産分割をトラブルもなく無事に終わらせるにはどうしたら良いのでしょうか。まずは、この記事で遺産分割に関する制度やトラブルに繋がりやすいケース、協議を円滑に進めるポイントをおさえましょう。

遺産分割について重要なポイントまとめ

  • 配偶者と子供がいる場合は配偶者1/2、子ども1/2など、相続人の数に応じて法定相続分が目安として定められている
  • 遺産分割には、現物分割、換価分割、代償分割、共有分割の4つの方法があり、それぞれにメリットとデメリットがある。
  • 遺産分割は相続人の調査→財産の調査→協議の開始→調停・審判という流れで進む
  • 相続財産の目録がない、被相続人の同居人の使い込みが疑われるなどのケースはトラブルに繋がりやすい
  • 遺産分割手続きを円滑に行うには、相続人を調査し、遺産を確定させる、借金は全員で負担することなどがポイント

遺産分割とは

日本では、故人の財産は配偶者や子供などの遺族に引き継がれるのが一般的で、相続人に財産を分割することを遺産分割といいます。相続人に該当する人が複数人いる場合は、相続方法によってはトラブルに発展してしまうことがあるため注意が必要です。次項からは、どのように分割すれば良いのか、分割方法について詳しく解説していきます。

遺産の分割割合はどのように決まるか

民法では相続人となれる人の範囲や順位が定められていて、相続権がある人を「法定相続人」と呼びます。法定相続人の基準は戸籍上の関係が重視されます。

遺産分割の割合の目安となる法定相続分

民法では「法定相続分」という分割の目安を示しています。目安は、あくまでも目安です。遺産分割は必ずしも、法定相続分の割合に縛られているわけではありません。相続人全員の合意があれば、法定相続分を無視しても良いのです。

 
配偶者のみ 全部
配偶者と子供 配偶者1/2、子ども1/2
配偶者と親 配偶者2/3、子ども1/3
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4

遺産分割の方法

遺産分割には、「現物分割」「換価分割」「代償分割」「共有分割」の4つの方法があります。ここでは、それぞれの分割方法のメリット・デメリットについて詳しく解説します。

現物分割

現物分割とは、不動産や車を子供にあげるように、遺産をそのままの形で分ける方法をいいます。現物の性質上、相続人の相続分できちんと分けることが難しいため、資産を売却して分割すること(換価分割)することが多いです。

メリット デメリット
売買やその代金の分配計算などの必要がない 財産の価値に偏りがある場合、公平性に欠ける相続となる
権利の帰属性がはっきりするため処分がしやすい  

換価分割

相続財産を売却して、お金に換えて相続分をきちんと分割する方法を換価分割と言います。現物分割と比較をすると、きっちり分割できるというメリットがありますが、処分費用や譲渡取得税などの余分な費用がかかってしまうというデメリットがあります。

メリット デメリット
金銭により細かな調整ができて、公平な分配が実現される 不動産の売却先を見つけるなどの手間が発生する
代償の金銭を支払う必要がない 手数料などがかかるため、相続財産が減る

代償分割

不動産を跡取りである長男が取得する代わりに、相続分以上の財産を取得する代償として、他の相続人に金銭を支払う分割方法のことを言います。

メリット デメリット
金銭により細かな調整ができて、公平な分配が実現される 相続財産の価値、評価方法についてトラブルになる可能性がある
権利の帰属性がはっきりするため処分がしやすい 金銭を支払わなければいけないため、資金が必要

共有分割

不動産や有価証券などを相続人で共有する方法を共有分割と言います。揉め事がないように見えますが、不動産を売却したいと思った際の手続きなどが複雑になります。

メリット デメリット
共有することによって争いを避けられる 相続した不動産を売却する場合などの手続きが複雑化する
相続問題を終局的に解決できる  

遺産分割の流れ

遺産分割方法について理解頂けたと思います。次に、遺産分割の流れについて解説します。具体的には以下の流れで進んでいきます。

  1. 相続人を調査する
  2. 相続財産の調査をする
  3. 遺産分割協議の開始
  4. 遺産分割調停、審判

相続人を調査する

遺言書がない場合は、相続人が自分たちで話し合って決めないといけません。この話し合いのことを、遺産分割協議と言います。遺産分割協議には全員が参加しなければいけないため、相続人調査を行う必要があるのです。 相続人調査をするときには、すべての戸籍謄本、改正原戸籍謄本を取得して、被相続人の親族関係を確認します。たとえば、前妻との間に、子どもがいる場合などには、戸籍調査によって、それらの子供が判別することがあります。

相続財産の調査をする

協議を始める前に、相続財産を確定する必要があります。相続財産調査をするときは、被相続人の自宅に保管されている財産関係の資料(預貯金通帳や証書、出資金の証書、不動産の権利書)を探してください。 最近では、ネット銀行やネット証券などで取引をしている方もいるため、インターネット上で、そのような取引の痕跡がないかを調査することも大切です。

遺産分割協議の開始

相続人調査と相続財産の調査が終わったら、遺産分割協議を開始します。協議は、すべての相続人が集まって遺産分割の方法を話し合わなければいけません。1人でも漏れていると、協議が無効となってしまいます。そのため、疎遠な人や新たに発見された前妻の子供などにも連絡をして、協議に参加してもらう必要があるのです。

相続人の中に未成年の人がいる場合は判断が難しいため、特別代理人を選任する必要があります。また、認知症のために、自分で判断できない場合は、成年後見人の申立をして、後継人を付けてもらう必要があるのです。 協議は、必ず集まって行わなければいけないというルールはありません。そのようなケースでは、メールや手紙、電話などの方法を使用して協議を進めても構いません。

遺産分割調停、審判

協議を進めても、意見が合わずに難航してしまうケースや、相続人のうち一部の人が協議に参加しようとなしないケースなども挙げられるでしょう。このような場合は、遺産分割調停を申し立てる必要があります。遺産分割調停は、相続人全員が参加しなければいけません。管轄の裁判所は、故人の住所地を管轄する家庭裁判所で、調停委員が第三者の立場として介入して、話し合いが進められていき、成立後に調停調書が作成されます。

補足:相続放棄や限定承認の方法

相続手続きは、故人が亡くなり、相続財産があると知ったときから3ヵ月以内にしなければいけません。遺産相続が発生した場合、必ずしも預金や現金だけを相続するとは限りません。借金などの負債も相続の対象となるのです。

たとえば、事業を開始するために高額な事業ローンを組んでいた場合などは、その借金も相続人に引き継がれます。また、相続人が賃貸に住んでいて、未払家賃などがある場合は、それらの家賃なども支払いの対象となるのです。また、損害賠償債務の相続の対象となります。

限定承認を行うことで借金相続しないで済む

被相続人の借金などの負債を相続したくない場合は、限定承認という手続きを行います。限定承認とは、遺産の内容を調査して債権者に先に負債を返済して、残金が残っていた場合は相続できる方法です。残金がなかった場合は、相続は発生しません。そのため、限定承認をした場合も、借金を相続せずに済みます。ただし、手続きに時間がかかるというデメリットもあります。

遺産分割でトラブルになりやすいケース

遺産分割は、裕福層だけの問題ではなくて、一般家庭においてもトラブルが生じるものです。ここでは、トラブルになりやすいケースについて解説します。

トラブルにつながりやすいのは、以下のようなケースです。

  • 目録がなくて相続財産の内容が不透明
  • 遺産の使い込みを疑う
  • 隠し財産を疑う
  • 相続財産の多くが不動産
  • 生前贈与が行われている

目録がなくて相続財産の内容が不透明

相続財産が不透明だと遺産分割を明確にできません。また、相続人同士で「他にも遺産が、部屋のどこかに眠っていたりするのではないか?」と不信感を持ち始めてトラブルに発展します。そのため、遺産分割をする前に、相続財産はすべて探しておきましょう。部屋の中を探すことはもちろんですが、株や仮想通貨などの取引をしていないか、ネット取引などの確認も忘れずに行いましょう。

また、年金の未収金なども相続財産の対象となるため、故人様の名義で届いている郵便物も確認をしてみてください。このように、部屋の中にある遺産だけではなく、ネットや郵便物を確認することで、相続財産の内容を明らかにできます。また、相続財産が見つかった場合は、目録を作成して、相続人同士で、どのような相続財産があるのか共有できるようなスタイルにしておくことが大切です。

遺産の使い込みを疑う

最近では、ご両親と同居する方も多くなってきました。その際に良くある話が「同居をしていた時に、両親の貯金を下ろして使い込んでいたのではないか?」と他の遺族の方から疑われるケースです。同居人が貯金の使い込みを否定しても、証明できなければ信用されないことも多く、トラブルに発展しやすいです。

また、中には病気で介護が必要な両親の介護をしている方もいるでしょう。そのように、両親の介護をしていただけの人が遺産の使い込みを疑われてしまうと、怒りが込み上げてきてしまいます。

隠し財産を疑う

また、遺産分割で多くの相続をもらうために隠し財産をする方がいたり、隠し財産を疑う人もいます。故人の預貯金が想像以上に少ない場合や口座内の残高がない場合に「他に隠し財産があるのではないか?」と疑われることが多いです。

相続財産の多くが不動産

現金や預貯金を分割する場合は、比較的簡単ですが、不動産の場合は分割が難しく難航します。その不動産を共有すると、管理をする上で不都合が発生します。そのため、1人に相続させようとすると、他の相続人との間で不平等が生じて、トラブルに発展してしまいます。

生前贈与が行われている

相続が揉めるケースとして、被相続人の生前に特定の相続人に対して財産を贈与することが挙げられます。生前贈与があると、贈与財産も遺産に含めて計算することによって不公平が起こらないようにしますが、この場合、そもそも何が生前贈与に当たり、どのように評価するかが問題となることが多いです。

遺産分割手続きを円滑に行うためのポイント

遺産分割は、思うように進まないものですが、手続きを円滑に行うためのポイントがあります。以下のような点が挙げられます。

  • 相続人となる人を調べておく
  • 故人が残した遺産を確定させる
  • 借金は相続人全員の負担にする
  • 遺産分割後に新たな財産が発見された場合の対処法を記載する

相続人となる人を調べておく

協議をする上で覚えておきたいポイントは、相続人に該当するすべての人が合意をしなければ、その協議は無効となり再度、話し合いをしなければいけなくなるという点です。とくに、離婚した相手が子供を引き取った場合などは、戸籍謄本を取り寄せなければ分かりません。そのため、協議を始まる前は相続人に該当する人をシッカリと調べましょう。

故人が残した遺産を確定させる

分割する遺産の内容を全て把握することも重要です。現金や不動産など財産だけではなくて、借金などのマイナスの財産もすべて洗い出します。また、相続財産の目録を作成するとスムーズできるため協議が円滑に進みます。

借金は相続人全員の負担にする

相続は預金や現金だけには限らず借金などの負の相続もありますが、これらを相続する場合は、全員で平等に相続するようにしましょう。借金を相続してしまうと想像以上のストレスがかかるため、1人に負の相続が偏るのではなく、全員でバランス良く相続するようにしましょう。

遺産分割後に新たな財産が発見された場合の対処法を記載する

遺産分割協議時に判明していない遺産が、分割後に発見されるケースもあります。その際に、どうするのかを決めておけば、後日の紛争を回避できます。この場合も、口約束をしてしまうと財産が見つかった後に「言った」「言っていない」などのトラブルになることが多いので、きちんと書面に対処法を記して共有しておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は遺産分割についてのお話をしました。

遺産分割は、人の死後もっともトラブルに繋がりやすいものです。できるだけ多くの財産を継ぎたいという人もいるでしょうが、誰かが欲望をむき出しにしては、それだけでトラブルになります。穏便に済ませるためにも相続人全員で話し合い、時には弁護士などの手を借りつつ進めましょう。

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