相続

相続を弁護士に頼むといくらかかるの?弁護士費用の相場を解説!

メディアでも、相続財産をめぐって争う様子が度々取り上げられるほど、相続は重要かつ厄介な問題。

相続と聞いただけでも頭が痛いという方も多いかもしれません。

相続を自分たちだけでのは気が重いから、弁護士に頼みたいという方もいらっしゃることでしょう。

相続を弁護士に依頼した場合、はたして弁護士費用はいくらぐらいになるのでしょうか。

遺言書の作成から遺留分減殺請求までシミュレーションしてありますので、参考してみてください。

この記事のポイント

  • 弁護士へ支払う報酬には、相談料、着手金、報酬金、手数料、日当、実費がある
  • 現在は弁護士への報酬について定めた基準はない。
  • 旧報酬規程をもとにした報酬を定めている事務所は多い
  • 複数の弁護士から見積もりを取り、直接会って面談をした上で決める

報酬の種類

弁護士に頼むと、高額な費用が掛かるのではないか、と心配される人は多いと思います。

しかし実際は、報酬が払えない程高額にはなりません。

弁護士の報酬には、以下のものがあります。

弁護士の報酬

  • 相談料
  • 着手金
  • 報酬金
  • 手数料
  • 日当
  • 実費

相談料

まずはどんなことを解決してほしいのか、どんな問題が起きているのかを相談する際にかかる費用です。

一応、目安としては30分で5,000円程度で、15分延長するごと2,500円となっています。

しかし、これは、あくまでも目安ですから、弁護士はこれに従わなくても全く構いません。

ですから、これよりも高額な場合もありますし、安い場合もあり得ます。

クレジット・サラ金相談では無料のようです。

他の法律相談でも、初回は無料という事務所も多いです。

着手金

これは、事件を弁護士が手掛ける時に、成功、不成功に関係なく支払うお金です。

(刑事にしろ、民事にしろ、あるいは官公署1件づつの手続きも事件と言います。)

成功報酬ではないので、1度事件に着手したらお金は戻ってきません。

また、例えば行政不服申立を依頼されたときに着手金を払いますが、その処分に不服があれば裁判を提起することができます。

しかし、その裁判の提起には、新たに着手金が必要な弁護士が多いです。

不服申立と、訴訟は別々の事件としてみる、という考えです。

弁護士業界では当たり前の話ですが、一般の人はあまり納得できないと思います。

そこで、次の着手金については減額したり、あるいは債務整理の際には無料にするといった弁護士もいるようです。

ただ、着手金が無料だからと言っても、その人が的確に事件を処理できる人とは限りませんので注意が必要です。

報酬金

いわゆる成功報酬です。

事件がややこしければ、高額になる可能性もあります。

相場では、離婚では20万円~30万円、刑事事件なら30万円~40万円などと言われています。

実際には、裁判でも敗訴だけでなく、和解や一部勝訴など、細かく分かれているため、相場と言っても一概に言えません。

依頼者に経済的利益があれば成功報酬はいくらかはもらえます。

また、反対に経済的に損失を被った場合は全くもらえないという点が着手金とは大きな違いがある所です。

着手金不要で、完全成功報酬制の弁護士もいます。

手数料

以下のようなものは着手金や報酬金になじまないものですから、手数料という形をとります。

  • 1回限りで終わってしまう手続き
  • 契約書の作成や遺言の執行手続き
  • 相続放棄での家裁の申述書のみの作成
  • 登記手続き

日当

弁護士が半日や1日等、その業務で拘束される時間です。

これは弁護士が事務所を離れる時間のことです。

例えば勾留場所での面会や弁護士が家庭裁判所へ離婚調停に同席する等で、電車や車に乗って会いに行く移動時間も含まれます。

1時間いくらという計算方法もありますし、着手金に3回までは無料、というように含めている弁護士もいます。

大体1日で5万円~10万円と幅があります。交通費は別です。

実費

交通費や印紙代、宿泊費等、実際にその事件について要した費用を指します。

その他には、会社や個人等と契約を結んで法律的な助言を与える顧問料等というのもあります。

ちょっとした相談や法律的なアドバイスは無料としている弁護士が多いようです。

しかし、個々の訴訟案件等は別料金、となっている弁護士がほとんどです。

もちろん、少しは割引もありますが。

報酬の目安となる「旧報酬規程」

2004年4月1日から、弁護種の報酬を定めた旧報酬規程は廃止されています。

日弁連の今の規定では、各々の弁護士が報酬基準を定めて、事務所に掲げる事とされているのみです。

そのため、具体的に幾らというような報酬の規定については、現在は定めていません。

現在は一律の報酬規程は存在しない

公正取引委員会に資格者団体の費用規定が独占禁止法に反する恐れがあると指摘されました。

そのため、各士業の団体は、報酬規程についての部分を廃止いたしました。

資格者団体とは、

  • 日本弁護士連合会
  • 日本司法書士連合会
  • 日本土地家屋調査士連合会
  • 日本税理士会連合会

などと言った、いわゆる士業と言われる団体の会のことです。

また、広告についても資格者団体は厳しい規制をしていました。

しかし、今ではインターネットやテレビの広告を見てもわかる通り、規制が廃止されています。

今でも旧報酬規程に則って報酬を請求する事務所は多い

旧報酬規程については、現在でもこれとほぼ同じ基準を定めている事務所も多いです。

しかし、それとは全く違う基準を設けて、相談料無料等と広告して、依頼人を集めている弁護士もいます。

ただ、小さな法律事務所では、旧規定を基準としている所が多いです。

そのため、これである程度の費用が計算できる弁護士も多いと思われます。

旧報酬規程からシミュレーションする費用の目安

いくら、報酬規定が無くなっても、旧報酬規程を尊重して、費用を請求することが多いでしょう。

ただし、それが一概に悪いとは言いません。

報酬が高くても、実績があったりとしっかり仕事をしてくれる弁護士を選びましょう。

それでは旧報酬規程の情報から、各費用のシミュレーションをしてみましょう。

以下の順番で見ていきます。

  1. 遺言書の作成
  2. 遺言執行
  3. 相続放棄
  4. 遺産分割協議
  5. 遺留分減殺請求

遺言書の作成

遺言書の作成は、今まで紹介した中のうち、手数料に当たるものです。

そのため、料金としては、着手金や成功報酬のないものに当たります。

その書類を作成するにあたる費用ですが、本当に単なる遺言書の作成だけならば、10万円~20万円程度です。

もし、公証人の前で行う遺言の作成ですと、弁護士の報酬は3万円追加となり、プラスして公証人への費用が必要です。

およそ4万円から10万円程度が公証人役場に対して納める金額になるでしょう。

しかし、これも遺言書記載の相続の価額によって変わってきます。

遺言執行

旧報酬規程では、裁判外の手数料に記載があるので、報酬の性質としては手数料となります。

基本は、最低30万円から始まり、3億円を超える部分は0.5%となっています。

複雑又は特殊な事情の場合は依頼者との協議となります。

相談料は、30分で5000円からですが、事件を受託したら最初の相談料は無料にする弁護士が多いでしょう。

遺言執行に関する費用・報酬については、相続財産から支払われます。

しかし、遺言で、財産が受遺者に全て渡った時は、受遺者の遺贈分から貰うことになります。

ただし、法定相続人が遺留分を求めた場合は、遺留分からは遺言執行費用は請求できません。

なので、受遺者から全額費用を貰うこととなります。

遺言執行に裁判手続きがある場合は、遺言執行手数料とは別途に裁判費用を求めることができます。

相続放棄

相続放棄も手続きとしては、簡易な家事審判に当たりますので、報酬は、遺言執行と同じく手数料となります。

弁護士の報酬は旧規定上は10万円~20万円以下となります。

ただし、相続放棄は被相続人が亡くなったことを知った時から3ヶ月以内に申述しないといけません。

そのため、漫然と期間を過ぎた場合は事案簡明なものとは言えなくなってくる可能性はあるかも知れません。

交通費や宿泊費などの実費は請求することができます。

遺産分割協議

遺産分割協議は、相続放棄とは違って、訴訟事件として扱われます。

通常の場合は、着手金が20万円~30万円程度ですが、もっと高額になる場合もあります。

着手金は、成功報酬のような報酬金とは違い、訴訟に負けても帰ってきません。

そして経済的利益を得た場合の報酬金はその経済的利益が

  • 300万円以下の場合は16%
  • 300万円超3000万円以下では10%+18万円
  • 3億円を超えたら4%+738万円

というようになっています。

報酬金は成功報酬です。

そのためもし、依頼者に経済的利益をもたらすことができなければ、当然貰えることはありません。

遺産分割の場合の経済的利益の算定は、遺産の総額×️依頼者の相続分×️3分の1として計算されます。

そして、この範囲内で30%の増減額が認められています。(17条の2)

調停などで終わった場合も、上記の訴訟事件に準じて着手金・報酬金が発生します。

しかし、額を3分の2に減額することができます。

調停から、訴訟事件などに移る時は、同じ案件でも着手金については訴訟事件の着手金の2分の1となります。

この事件に関しては、旧報酬規程の第5章の第39条の適用はできず、時間割での費用とすることはできません。

そして弁護士はどの事件でも、

  • 4時間以上の出張なら3万円以上5万円以下
  • 1日(4時間を超える場合)なら5万円以上10万円以下

の日当を受け取ることができます。

(出張とは事務所にいない時間のことで、交通機関で移動中の時間も含まれています)

また、弁護士は着手金や報酬金の他に旅費、切手代、印紙代、宿泊料などの実費を請求することができます。

遺留分減殺請求

遺留分減殺請求権についても、遺産分割協議と同じく、民事事件として扱われます。

経済的利益の対象となるのは、対象の遺留分の時価相当額です。

まずは相談から始まるのは、他の事件と同じで、相談料は規定では30分で5000円、30分ごとに追加というのが基本です。

しかし、事件の依頼を受けた場合は、無料にする弁護士が多いです。

最初に、遺留分減殺請求の場合は、相手方に対して意思表示をしなければなりません。

そのため、受遺者に遺留分減殺請求権を行使すると意思を表さなければ減殺請求権の効果は発生しません。

もちろん、受遺者に直接言いに行っても構わないのですが、証拠の問題が残ります。

証拠をきちんと残さないと、後で裁判になった時に不利になる可能性があるからです。

そのため通常は、証拠が郵便局に残る内容証明郵便で遺留分減殺請求の行使の意思表示を行うことがほとんどです。

内容証明郵便については、旧規定では、裁判外の手数料となっており、基本は3万円から5万円です。

その内容証明によって遺留分を支払ってくれれば事件はそれで終了となり、民事事件とはなりません。

そのため、弁護士は手数料として裁判外の手数料を報酬として受け取るだけになります。

しかし、調停や訴訟になった場合は、民事事件としてその後その遺留分減殺請求の訴訟案件の事件を受託する事になる可能性が高いです。

その時は、遺産分割協議と同様、民事事件となりますから、着手金が請求されます。

この場合は、規定に従い、新しく受託する民事事件として着手金を貰い受けます。

報酬金も同様に、委託者が経済的利益を受けた時のみ貰うことができます。

日当、実費等は、ほかの事件と同様です。

相見積もりをとる

複数の弁護士から見積もりをとることに馴染みがない人も多いでしょう。

今では、各弁護士事務所の比較サイト等というものもあります。

インターネットで検索すれば、色々な法律事務所が、費用や実績、得意分野などをアピールしています。

相見積もりをとるのは全く恥ずかしいことではありません。

むしろ、見積もりを出そうとしない弁護士の方が信用できないといってよいでしょう。

日弁連の弁護士の報酬に関する規定にも、依頼しようとする人から求められれば見積書の作成及び交付に努めるという規定になっています。

一応、努力目標ではありますが、きちんと見積もりを作成することが現在の社会では当たり前のことでしょう。

相見積もりの実際のとり方

 

現在では、最初はスマートフォンから検索して複数の弁護士に、メールで問い合わせする人が多いようです。

特に借金問題や離婚問題などでは家族に知られたくないと思う方も多いのでしょう。

ですから、見積もりは、割と気軽に、何人もの弁護士からとることができます。

結局は見積もりだけでは決められない

後は、実際に面談してから決めることです。

いざ会ってみたらどうも相性が悪いというケースも、やはり人間同士なのでよくあります。

実際に複数の人と相談をしてみてからどの弁護士に依頼するかどうかを決めた方が良いと思います。

相続の弁護士の費用は誰が払うべき?

遺産相続の問題は、相続をする可能性がある人の全員の問題でもあります。

そのため、弁護士の費用は誰が払うべきなのでしょうか?

結論から言うと、弁護士の費用は弁護士に依頼をした人が支払います。

というのも、弁護士の仕事は公平にすることではなく、依頼人の主張を実現させることにあるからです。

ただし、相続する人の了承がとれれば、遺産の中から支払うと言うこともあります。

弁護士の費用が払えない時の対処法

弁護士の費用はお世辞にも安いとは言えるものではありません。

トラブルになっている、なりそうだから依頼をしたいけど、費用が払えないということもあるのではないでしょうか。

ここまで解説してきたように、弁護士への依頼として着手金と成功報酬があります。

成功報酬は後払いのため大丈夫なこともありますが、着手金に関しては前払いになります。

着手金の費用が払えないときの対処法としては、弁護士に直接相談をしましょう。

後払いにしてくれたり、分割払いに変更してもらえる可能性があります。

もう一つの方法として日本司法支援センター(法テラス)の民事法律扶助を受けるというもの。

これを受けるには、収入や資産額等の審査があるものの、無料相談ができたり、弁護士の費用を大きく抑えることができます。

まとめ

この記事のポイント

  • 弁護士へ支払う報酬には、相談料、着手金、報酬金、手数料、日当、実費がある
  • 現在は弁護士への報酬について定めた基準はない。
  • 旧報酬規程をもとにした報酬を定めている事務所は多い
  • 複数の弁護士から見積もりを取り、直接会って面談をした上で決める

いかがでしたでしょうか。

私たちが人である以上、亡くなるということは避けようもないことです。

そして身内が亡くなった場合は、悲しむ間もなく相続の問題が浮上します。

弁護士費用についてはある程度の基準はあるもののケースバイケースであることがほとんど。

しっかり見積もりをとり、きっちりと仕事をしてくれる信頼のおける弁護士を選びましょう。

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