葬儀や法要は、服装や香典などのマナーを守ったうえで執り行うものです。また、参列者が送るものとして、香典や供花の他に供物が考えられます。しかし、供物を送る場合、「宗教ごとの違いはある?」「香典を断られていたらどうすればいいの?」などの疑問を持つこともあるでしょう。
この記事では、そうした疑問を解決するとともに宗教ごとの供物の送り方や相場などについてみていきましょう。
供物は簡潔にいえば、故人に対して捧げるお供え物のことを指します。これは供花や香典と同等の意味を持つものであり、送り方やどんなものを送っていいのかが各宗教によって大きく異なるのが特徴です。
香典 | 供花 | 弔電 | 供物 |
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お金や品物、花、電報など形が異なるものの、全て弔意を示すもの。意味としては大きな違いはないため、香典と供物を持参・送った場合、遺族はお返しを用意する必要がある |
また、葬儀においての供物は、業者に任せることができます。また、供物の扱いに関しては地域性や宗教が強くでることに注意が必要です。
仏教で送れるものは、幅広く、供物で困ることはないでしょう。特に果物などであれば、トラブルとなることもありません。上記以外では、肉や魚なども考えられるものの、それらは仏教では供物として送ることはNGです。殺生を連想させるものであり、缶詰などであったとしてもその中身はよく考慮する必要があります。
キリスト教においては、供物として指定されているものは実はありません。生花を送ることがある程度です。また、供物としての生花は供花と同じ扱いであることから、花もある程度種類を選択する必要があります。例えば以下のような花であれば問題ないでしょう。
バケットにまとめるなど、花のまとめ方や供花として選べる花も仏教と大きく異なる点は注意が必要です。
神道の場合は、以下のものであれば送ることが可能です。
仏教と大きく違う点は、ろうそくや線香は送ってはならないことです。また、葬儀や法要などであっても神道では、香炉を使わず、卒塔婆をお墓に掲げることもないことから、宗教の違いはよく把握しておく必要があります。
供物で花を送る場合は、宗教ごとに何がOKなのか、大きく異なります。また、故人の棺などに手向ける枕花や斎場などの周りに飾る花輪などとは異なる点も注意が必要です。
供花を送る場合、以下の2つの方法があります。
花の用意は、葬儀社に依頼するケースが多く、特にどのような宗教の供花であってもマナー違反とならない花を選択してくれるといえます。
仏教の供花の場合は、白い菊がメインで使われることが多く、ユリなども送ることが可能です。また、籠もりと呼ばれるカゴいっぱいに花を詰め込んだものを祭壇に飾る文化もあります。
白い会場となる場合には、籠もりではなくフラワースタンドなどを使用することもあるため、会場の広さを考慮した準備が必要です。加えて、地域によっては、しきみと呼ばれる花も供花として送ることが可能です。ちなみに、生花ではなく、プリザーブドフラワーでも問題はありません。プリザーブドフラワーは加工された生花であるものの、非常に長期間その姿・形を保つことのできるものです。
仏教の場合、供花に対して立て札を書く場合もあります。これは、立て札の名前は誰でも把握できるようにするためです。供花は、仮に遺族が受け取った場合、返礼品を用意するのが一般的であることも意識しておきましょう。
立て札は、以下のポイントが重要となります。
立て札を書く場合もマナーに沿ったものでなければ、会場で恥をかく可能性があります。そのため、花を送る場合はよく確認しておきましょう。
キリスト教の場合の花は、遺族に対するなぐさめの意味合いを持つものです。白い菊を使うことはなく、ほぼユリやカーネーションなどで構成されたフラワーアレンジメントを使用します。
キリスト教における供花においては、トゲのないバラであれば使用することが可能です。カトリック・プロテスタントどちらであっても、問題なく送ることができるでしょう。また、仏教とは異なり、立て札はつけないことに注意が必要です。
神道での供花は、仏教と大きく変わりません。菊やユリなどであればトラブルとなることは少ないでしょう。また、榊(さかき)も供花として用いられることがあります。花の色に関しては、白い色が多く使われる傾向にあり、色とりどりを意識する必要はありません。
供物の相場についてみていきましょう。お供え物は、香典などと意味合いは同一です。そのため、相場を知り、適正な金額に沿った供物を遺族に送ることでマナー違反となることを防ぐことができるでしょう。
香典とは異なり、食べ物はいつまでも置いておけるわけではありません。しかし、意味合いは同一です。そして、食べ物を供物として送る場合は、5,000円~15,000が相場となっています。
金額に開きがあるのは、供物として食べ物を選択する場合、供花や香典などといった他の弔意を示すものを持っていくことがあるためです。この場合、香典の金額に合わせて、数千円程度の食べ物を持っていくパターンが非常に多いといえるでしょう。加えて、盛籠などは大きさによっては、葬儀社などに確認しておくとトラブルを防止できます。
参列者が葬儀や法要で香典や供花を用意するのは、考え方として一般的であるものの、遺族から不要だと伝えられることも増加しつつあります。その場合でも、供物としての食べ物であれば受け取ってもらえることもあるものの、負担を減らすことが家族葬の目的であるため、金額は抑えることをおすすめします。
花は、供花として扱われるため、金額は食べ物よりは高価です。宗教によって、遺族に送れる花は異なってくるものの、その相場は5,000円~20,000円の間となっています。ちなみに、参加する場合はお金だけを渡すパターンもあります。
スタンド型なのか、祭壇に飾るタイプなのかなどによって大きく値段が異なるものの、供花に関しては訃報が届いた段階で遺族がその扱いを決めています。供物という扱いであっても、遺族からNGと言われている場合は、花を送ることは避けましょう。
また、供花を送るパターンとしては、一般葬や家族葬などどのような葬儀の形でも断りがない限り香典と同じく用意が必要です。ちなみに、フラワーアレンジメントなどであれば、5,000円程度で購入できるため相手の負担も考慮して用意しましょう。
灯籠(とうろう)なども場合によって考慮できます。灯籠は、祭壇の周りに置くものであり、場所を取るものでもあるため、供物として送る場合はよく遺族に確認しましょう。灯籠は安価ではないため、金額の相場は10,000円から25,000円ほどです。
宗教によっては、花以外の供物は必要としないパターンもあるため、よく確認したうえで準備しましょう。
お供え物を送る場合の留意点や注意点を確認することは重要です。仮に、親しい間柄であっても葬儀の場で不備があった場合、その後の関係性が変わる可能性もあるといえます。
葬儀を行う場合、訃報の知らせを受け取ります。その際、葬儀社まで記載している場合、お供え物についてはよく確認しましょう。例えば、香典や供花を断っている場合、お供え物を送っても問題ないかどうかは、その葬儀の喪主が決めるものです。
供物の意味からすれば、お返しが必要になるため、そうした負担を軽減する意味でも全て断っているパターンも最近の葬儀では増加しつつあります。そのため、案内の段階で不安を感じた場合は、参列する前に確認しておきましょう。
供物を送る場合は、通夜がある一般葬・家族葬などでは、通夜が始まる当日の午前中が良いでしょう。通夜が始まる前に祭壇に対して飾りつけを行う必要もあるためです。加えて、線香などは、手で持っていく場合もあるため、供物がどのくらいのスペースを取るのかも把握しておきましょう。持参の場合は受付に預けることができます。
また、通夜がない場合は、葬儀開始前までに届くように配慮することがベストです。実際に、葬儀のスタイルによっては祭壇を設けることもないため、遺族が扱いに困らないように配慮しておきましょう。
供物の注意点は、香典なとど同じ意味合いでも、香典を辞退する旨を受け取っていたとしても遺族に送ることはマナー違反とはならない点です。香典は、故人や遺族に対して送るものの中で、最も負担が重いものであり、基本的には半分ほどの金額は返すことがマナーとなっています。
家族葬や直葬などでは、親族以外の参列者を呼ばず、香典も断るといったパターンも少なくありません。しかし、供物においては、香典・供花・弔電が断られていても送ることができます。
香典 | 供花 | 弔電 | 供物 |
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喪主によって可否が決まり、断られた場合は持っていかないこと。具体的な言及がなければ、葬儀の形式から推察し、わからなければ葬儀社などに聞く。 | 断りがなければ送ることができる。しかし、意味合いは香典などと同じであるため、訃報の知らせで断りがなければ聞いた方がいい。食べ物などは問題ないパターンもあるものの、特に花は供花として扱われるため、注意が必要。 |
しかし、断りがなかったとしても、供物も弔意を示すために送られるものであるため、受け取った遺族はお返しが必要となります。この場合、お返しが必要なければ、逆に参列者が遺族にお返しは不要という旨を伝えなければなりません。
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