お墓・納骨

お墓の用語の意味と世界のお墓事情

お墓のイメージは、長方形の墓石がずらりと並んだ墓地を思い浮かべる方が多いでしょう。しかし、お墓とは本来どのような意味で、どんな役割があるものなのでしょうか? また、海外では、日本とは慣習も宗教観も違うため、お墓に対する考え方や、墓参りなどの習慣に関しても違いがあるようです。

この記事では、日本のお墓の意味や役割、海外のお墓と日本のお墓の違いについて解します。

そもそも「お墓」とは

お墓は亡くなった方の遺骨を収納する場所です。日本では厚生労働省が墓地埋葬法に基づいて管理を行っています。

定義

辞書でのお墓の定義と埋蔵法に定められたお墓の定義について確認してみましょう。

法律上のお墓の定義

昭和23年に制定された「墓地埋葬法」によって、日本国内の埋葬や火葬に関してのルールが定められています。

  • 「墳墓とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう」(第2条第4項)
  • 「墓地とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあっては、市長又は区長。)の許可を受けた区域をいう」(第2条第5項)

つまり、遺体を埋葬したり火葬した遺骨を納骨する場所自体が「お墓」であり、お墓が設置できるのは、自治体から許可を受けた区域に限定されているということです。

辞書上のお墓の定義

広辞苑では次のように定義されています。

  • 「死者の遺骸や遺骨を葬った所」

日本人の多くが、お墓という言葉を聞くと、墓石を思い浮かべると思いますが、辞書でも、法律上でもお墓は、ただ単に遺骨や遺体を埋葬してある場所のことを指すのであって、墓標や墓石に関しての記述はありません。つまり、土中に埋葬して墓標を設置する一般墓や樹木葬だけではなく、屋内に保管する納骨堂などもお墓として定義されるということです。

種類

墓石を墓標としたもの以外にも様々なお墓があります。

一般墓

多くの方がイメージする墓石が墓標となっている形式の墓が一般墓になります。以前は、長方形の墓石を使用したものが多く、かなり高さがあるものがほとんどでしたが、最近では、様々なデザインのものが増えており、墓の高さも低いタイプのものが多くなってきています。

樹木葬

墓石の代わりに樹木を墓標とするのが樹木葬です。墓標のタイプは2通りあり、一つは霊園のシンボルとなる大きな樹木の下に、遺骨を埋葬するもの、もう一つは区画を購入し、納骨した土地の上に樹木を植える形式のものがあります。

樹木葬を行う場所も2つのタイプがあり、霊園の一つの区画を樹木葬用にする、霊園型の樹木葬と、里山の自然樹木の中に埋葬する里山型の樹木葬があります。

納骨堂

一般墓や樹木葬は、墓標は違えども土中に骨を埋葬するという形式ですが、納骨堂は建物内にスペースを設置し、家族単位や個人単位で、納骨スペースに骨壺のまま納める形式のお墓になります。寺院の中に設置されているのが一般的でしたが、最近では都市部にビルタイプの納骨堂が増えています。

合祀墓

お墓となるシンボルの下に、それぞれの遺骨を埋葬するタイプが合祀墓です。永代供養で行われることがほとんどで、埋葬する際には骨壺から骨を出して中に入れます。そのため、他の遺骨と混ざり合ってしまい、一度合祀墓に納骨すると、その後に取り出すことはできません。

個別式集合墓

個別式集合墓も合祀墓の一つになりますが、骨壺から遺骨を取り出して埋葬する形式ではなく、石の墓標の中に設置されたスペースに骨壺を納めるタイプになります。

屋外に設置された納骨堂のような感じを思い浮かべればわかりやすいと思います。そのため、埋葬後に遺骨を取り出せないという、合祀墓のデメリットがなく、合祀後に遺骨を取り出すことが可能です。

役割

お墓には精神的な役割と物理的な役割があると言われています。

物理的な役割

法律上でも辞書でもお墓の意味は「遺骨や遺体を埋葬する場所」となっています。また、法律ではお墓以外の場所に遺骨や遺体を埋葬することはできません。そのため、遺骨を法律で定められた場所に納めるという物理的な役割がお墓にはあります。

精神的な役割

時が経つごとに人の記憶は薄れて、いつの日か亡くなった人のことを覚えている人がいなくなってしまいます。しかし、お墓があることで、時が流れても、次の代そして、さらにその次の代に故人の生きていた証が繋がれていきます。

大切な人を失ってしまった時も、お墓に語り掛けることで、まるで生前の故人と話しているような気持ちになることもあります。お墓は故人のためだけではなく、大切な人を失った遺族の精神的な支えとなるものと考えていいでしょう。

また、地方都市では人口流出が多くなり、親族などが顔を合わせる機会はほとんどなくなってしまいましたが、お墓参りの機会に、1年に1度は顔を合わせることができるので、今生きている親族を繋ぐ役目を果たしているとも言えます。

世界のお墓をご紹介

海外ではどのようなお墓が一般的なのでしょう? 世界のお墓のについて見てみましょう。

英語で「Grave」

日本でも外人墓地で見られるように、石碑に名前が刻まれたものや、十字架を建てて墓標にするのが一般的です。外国の埋葬は全てが土葬だと思われがちですが、最近では火葬化が進み、アメリカのニューヨーク周辺では、既に火葬の割合が40%を超えています。

火葬後は、日本のように埋葬するのではなく、散骨したり、自宅に置いたりするケースが多く、埋葬する場合は、ほとんどが土葬になります。

お墓の購入費用を見ると、墓石の使用料が少ないことや、土地使用料が安いことから、日本よりもかなり相場は安く、土葬の場合は7000$程度のようです。

日本との大きな違いは「お墓参り」の習慣がないことです。キリスト教では「死者の魂は神の御許に赴く」との教えから、お墓へ赴くのは葬儀の時だけという方が多いです。

韓国語で「무덤」

韓国のお墓は、日本のように石などの墓標を建てるのではなく、山の斜面に穴を開けて、埋葬した上に小さな山のような形になるように土を盛る形式です。

儒教の影響から韓国では土葬が主流でしたが、国土が狭く、お墓を建てるための山が足りないという事情から、新しい埋葬に関する法律が制定されて、国や自治体が積極的に火葬による埋葬を推進するようになりました。

現在では、火葬されるケースが増えて来ており、特に都市部ではロッカー式の納骨堂を利用する方が多くなっているようです。

中国語で「坟墓」

中国も韓国と同様に、儒教の影響が強く、かつては土葬での埋葬が大半を占めていました。1950年に毛沢東の文化大革命の一つとして「殯葬改革」という葬儀改革が行われ、国策として土葬から火葬への切り替えが進められ、現在は、火葬が一般的な埋葬方法となっています。

日本でもお墓の土地不足は問題になっていますが、中国では日本のように先祖代々の墓や〇〇家の墓といった概念がないため、故人に対して一つのお墓を建てるため、広大な国土がありながらも、土地が不足してしまうという事態になっているようです。

お墓のタイプは日本と同様に、石を墓標としているものが多いですが、長方形や正方形の墓石が多い日本とは違い「亀甲墓」と呼ばれる亀の甲羅のような形の墓石が多く見られます。この形のお墓は日本でも沖縄などでよくみられる型です。

中国では、日本と同様にお墓参りの文化があります。しかしお盆にお墓参りをするのではなく、4月の上旬に「清明節」という行事が設けられ、その時期に親族や家族でお墓参りをするのが習慣となっています。

お墓参りのやり方も日本とは異なり、墓参りに来た親族が墓前で酒宴をして賑やかに行うというものです。同じ墓参りの習慣があるとは言え、墓前で静かに手を合わせるだけの日本とはまさに正反対ですね。

フランス語で「Tombe」

国民の9割がカトリックであるフランスの埋葬方式は土葬が主流です。

カトリックでは、世紀末にキリストが再臨し、全ての死者は復活した後に、最後の審判を受けて、永遠の命を与えられるものと、裁きを受けるものに分かれるという教えがあり、火葬して肉体を失ってしまうと復活ができなくなってしまうという考えからなのですが、最近では、無宗教の方が増えたことや埋葬費用が安くすむという理由で火葬を希望する方も増加しているようです。

日本のお墓との一番の違いは、墓地として利用する土地を永代使用できる日本と違い、フランスでは区画を借りるという形になっているところです。2年、5年、10年、永代など、借りる期間によって費用を支払い、期間が過ぎたら墓は撤去され、合祀されるという形になっています。

日本語では「お墓」

仏教が広まるまで、日本の信教は「神道」であり、あらゆる儀式は神道の慣習によって行われていました。

神道では火葬は忌まわしいものとされていたので、日本でもかつては土葬が主流でした。火葬になったのは明治時代になってから、都市部周辺の墓の衛生状態が問題となったからです。

寺院の敷地などにお墓を建てるようになったのは、江戸時代中期以降と言われています。

先祖代々の墓や、個人の墓を寺院や墓地などに建てるようになったのは、江戸時代後期からですから、意外に新しい習慣と言えるかもしれません。

それ以前は、集落の近くに墓を作り埋葬することは禁じられていました。神道では遺体は「穢レ」にあたるもので、人々に疫病などの災いをもたらすものとされていたからです。そのため人里から離れた山奥などに埋めるのが一般的でした。

埋められた遺体は、「穢レ」にあたるものなので、埋葬場所にお墓参りをする習慣などもなく、故人の魂を祀るために、村の寺院などに慰霊碑が立てられ、そこに参拝するというのが習慣となっていました。

最近では、お墓に拘らない、散骨方式などの自然葬も増加しており、日本の墓の事情は、これからも多様化していくと考えられています。

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