ビジネスシーンや式典など、特定の場にはその場に合った言葉遣いがあるもの。
その場にふさわしくない言動をしてしまえば、ほかの出席者から不興を買うことは容易に想像できます。
葬儀という場でももちろん、その場にふさわしい言葉遣いが求められます。
特に「重ね言葉」や「続き言葉」などといった葬儀にふさわしくない忌み言葉については、一段と注意を向ける必要があります。
ここで、葬儀でご遺族の方に声をかける時の最適な言葉遣いと注意点とをおさらいしておきましょう。
この記事のポイント
お葬式の受付でかける言葉
葬儀に参列して、受付で記帳する際はお悔みの言葉を述べて挨拶します。
受付は、故人のご遺族の方が担当している場合もあれば、葬儀社の従業員が対応している場合もあります。
受付係を誰が担当しているかによって、かける言葉は変わってくるので覚えておきましょう。
ご遺族が受付にいる場合は「心よりお悔み申し上げます」が一般的な言葉です。
大きな声を出したり、笑顔で伝えたりする挨拶はマナー違反です。
むしろ、ご遺族の方は深い悲しみに暮れているので、同じ気持ちであるかのようにトーンを落として話しましょう。
大声で話したり、笑顔で挨拶をしたりするのは、失礼にあたるので注意してください。
故人様のご遺族と親しい関係者であれば言葉をかけずに黙礼をしても大丈夫です。
香典をお渡しする際は「ご霊前にお供え下さい」と一言だけ伝えます。
受付の人が、葬儀社の従業員であるため、かける言葉が見つからないと黙ってしまう方が多いようです。
もし、葬儀社の従業員が受付にいる場合は、淡々と受付をしているように感じるかもしれませんが「この度は、ご愁傷様です」と一言伝えておきましょう。
遺族へかける言葉
故人との関係性や立場によって、かける言葉は変わります。
どのような言葉をかけていいのか、参列する前に確認してください。
もしご遺族の親族にあたる場合は「この度は、ご愁傷様です」「お悔み申し上げます」「心中お察しいたします」が基本的な言葉になります。
「何か手伝えることがあれば、何でもおっしゃってください」とも伝えておくと良いでしょう。
故人やご遺族の方と仕事関係でつながっている場合は、節度を持って「この度は、誠にご愁傷様です」と丁寧な言葉を交わしておきましょう。
お葬式の時には、親族以外はあまり声をかける機会がないかもしれません。
そのような場合は、参列者や葬儀社の方と目があった際に、軽く会釈をします。
葬儀で気をつける言葉
近頃の若い世代の方は、葬儀での言葉を気にしないという話もありますが、葬儀ではさまざまな世代の方が集まります。
まだ、忌み言葉を嫌う年配者も多いです。
そのため、忌み言葉を使用しないように気をつけましょう。
重ね言葉は、不幸が続くことをイメージさせてしまうため使用してはいけません。
身近な方が亡くなると死について考えてしまうものですが、そのような気持ちを引き起こさないためにも、重ね言葉を使用しないことは基本的なマナーとなります。
ますます | いよいよ | みるみる | まだまだ | だんだん | 重ね重ね |
返す返すも | 重々 | くれぐれも | 度々 | しばしば | いろいろ |
再々 | 次々 | わざわざ | またまた | 皆々様 | どんどん |
日々 | ときどき |
益々(ますます) | 一段と、よりいっそうの |
---|---|
返す返すも | 本当に、まことに、振り返ると、思い起こせば |
次々 | 立て続けに、休みなく、たくさん |
重ね言葉と同様に、不幸が続くことを連想させてしまう続き言葉も使用してはいけません。
追って | 追いかける | 再び | 再三 | 再三再四 | 再度 |
何度も | なおまた | なお | 次に | 続いて | 続けて |
続く | 引き続き | さらに | 加えて | 繰り返し | 繰り返す |
重ねて | もっと | 追伸 | 今一度 |
追って | 後ほど、同様に |
---|---|
次に | その後、新たに、別の機会に |
もっと | 一段と、その上、おまけに |
故人の方と年齢が近い方が葬儀に参列すると「今度は自分の番かもしれない」と考えてしまうこともあります。
不吉な言葉を使用して、周囲の人を弱気にさせてしまうようなことは控えます。
消える | 大変なことになる | 落ちる | とんでもないこと | とんだことに | 死を連想させる数字の四 |
苦を連想させる数字の九 | 流れる | 敗れる | 終わりに |
四 | 「し」ではなく「よん」と発音すれば使用できる |
---|---|
九 | 「く」ではなく「きゅう」と発音すれば使用できる |
日本の文化では、直接的な言葉も好まれません。
「死」という言葉を使用しなくてもいろいろな言い回しができるため、当たり障りない表現に置き換えることが大切です。
死亡 | 死ぬ | 亡くなる | 死去 | 自殺 | 急死 |
生きる | 生存 | 御存命中 | 生存中 | 生きていること |
死亡 | 逝去、他界 |
---|---|
生存中 | ご生前、お元気な時 |
急死 | 突然のこと |
葬儀の宗派によっても変わります。
例えば、仏教では天国という言葉は存在しません。
天国を例えるときは「浄土」とか「空の上」と言います。
とくに浄土真宗の場合は、他の仏教との考えと大きく異なるため、仏教用語がそぐなわないことが多いです。
仏教 | 天国、浮かばれない、浮かばれぬ、迷う |
---|---|
浄土真宗 | ご冥福、霊前 |
キリスト教 | お悔み、成仏、冥福、供養、往生、哀悼 |
遺族へ挨拶するときの注意点
一つ一つの言葉や表現のほかにも、葬儀に参列し挨拶を場合は次のような行動にも気を付けましょう。
故人と生前に親しくしていた場合は、どうして亡くなってしまったのか死因が気になるものです。
しかし、故人の死因について聞くことは失礼となります。
ご遺族は突然の訃報を聞いて、悲しみに暮れているはずですし、まだまだ故人が亡くなったことに対しての心の整理ができていない可能性も高いです。
そのため、死因に限らず、ご遺族の方々を悲しませるような質問をなるべく避けます。
葬儀は、故人との最後の別れを偲ぶために執り行われ、あの世へ送り出す神聖な儀式です。
挨拶をする時は、大きな声で笑顔で挨拶をしては失礼です。
なるべく、ご遺族の立場を配慮して、お悔みの言葉を述べる時は、極力声を抑えて、笑い話などは避けるようにします。
訃報の連絡を受けて、やむを得ない事情で葬儀に参列できない場合は、電話でお悔みの言葉を述べる人がいます。
この行為は、親しい友人でない限りは失礼に値するため気をつけましょう。
基本的には、お悔やみの言葉はご遺族の目を見て伝えます。
どうしても、参列できない場合は、弔意を示すために弔電を打ったり、供花を贈ったりすることができます。
もしくは、後日に弔問するのも1つの方法です。
電話でお悔みの言葉を述べて、挨拶を終わらせることは絶対にやめましょう。
葬儀は、基本的に挨拶をするタイミングが決まっています。
参列した際は、香典を渡す受付時にお悔みの言葉を述べましょう。
また、葬儀中は挨拶をしてはいけないタイミングも存在します。それが焼香を行うときです。
焼香を行う際は、参列者は席から立ち上がり、祭壇前に出て行うものですが、その際の挨拶は一礼だけするのが基本マナーです。
声を出して挨拶してはいけません。
ご遺族の方は、準備や参列者の対応に追われて、不慣れな準備で忙しくしています。
温かい心遣いで声をかけることは大切なことですが、当日には長話をしてはいけません。
葬儀の際は、ご遺族の心境を配慮して、手短にお悔みの言葉を述べましょう。
この記事のポイント
基本的にはお悔やみの言葉は直接伝えるべきではありますが、時にはメールなどでもお悔やみの言葉を伝える場合があります。
具体的には、訃報の連絡がメールできた場合の返事や友人や知人などの近い関係の人、仕事関係の方にはメールを用います。
また、メールについての注意点をいくつかご紹介します。
メールの件名に関しては「〇〇(自分の名前)よりお悔やみ申し上げます。」と簡潔にしましょう。
簡潔にすることで、送り主と用件が一目でわかるようになります。
もちろん件名が空になっていると、メールを読んでもらえない可能性もありますので気をつけましょう。
お悔やみの言葉のメールに関しては時候の挨拶などの前置きは不要になります。
時候の挨拶などの前置きとは、例えば梅雨の時期だと「雨の日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。」といったものになります。
口頭でお悔やみの言葉を伝える際には簡潔に長話にならないようにすることがマナーでしたが、メールの文面でも同じです。
長文になりすぎないように、内容を簡潔にまとめましょう。
この記事のポイント
いかがでしたでしょうか。
お葬式の場では、ご遺族は親しい人を亡くして深い悲しみに暮れています。
そんな中でご遺族の心中を察しない言葉をかけてしまうとご遺族の心情を害するばかりかトラブルになる可能性もあります。
縁起の悪い「忌み言葉」についても、十分気を付けるべきでしょう。
口は災いの元と言われますが、とりわけ細かい気づかいが求められる葬儀の場では、自身の言葉遣いには十分に注意しましょう。