冠婚葬祭の中で、葬儀は前触れもなく訪れることが多いものです。葬儀のマナーを知らない状態で突然訃報を受け取り、準備に使う時間がなく本番で恥をかいてしまうことはどうしても避けたいもの。
このページでは、葬儀に参列することになった人がおさえておきたいマナーと、お通夜・告別式の大まかな流れをまとめています。まだ時間に余裕のあるうちから葬儀でのマナーや全体の流れについておさえておけば、急に葬儀に参列することになった時でも幾分落ち着いて対応できるはずです。
式場にいるご遺族の方は、深い悲しみに暮れている中で、会葬者の方の対応に追われています。そのため、葬儀に参列する場合は、基本的なマナーを守り参列するようにしましょう。ここでは、参列者としての心得について解説します。
常識ある葬儀の参列者として、以下のような点には気を付けたいところです。
これらの点を意識しておくことで、ご遺族やほかの参列者の方々へ無用な負担をかけることを避けられます。ご自身がマナーのなっていない人だと思われないためにも、一つ一つ詳しく確認していきましょう。
葬儀式場にいるご遺族は、深い悲しみの気持ちの中で、会葬者の対応に追われています。また、近親者として葬儀を執り行うことは、人生で何度も訪れることではありません。慣れない葬儀の手配に追われている可能性が大きいです。そのため、お悔みの言葉は必要最低限にとどめましょう。無駄話をしてしまうと、ご遺族の方に負担になってしまいます。
基本的には、葬儀に参列することで十分な弔意を示すことができます。そのため、無理にご遺族の方を探して、お悔みの言葉を述べなければいけないということはありません。
葬儀という場には、口にしていい言葉と口にしてはいけない言葉が存在します。それが「忌み言葉」呼ばれるものです。忌み言葉には不幸が続くことを連想させたり、直接的な表現であるため言うのが憚られるものがあり、聞いた遺族やほかの参列者の気分を害してしまう可能性が大いに考えられます。
忌み言葉には、以下のようなものがあげられます。
不幸が続くことをイメージさせる重ね言葉 | 「ますます」「返す返すも」「重々」「わざわざ」など |
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不幸が続くことを連想させる続き言葉 | 「続いて」「次に」「再度」「追って」など |
不吉な言葉 | 「消える」「落ちる」「終わりに」数字の四と九など |
直接的な言葉 | 「死亡」「御存命中」「生きる」「亡くなる」など |
特に重ね言葉や続き言葉などはその性格上、葬儀の進行などでは使ってしまいがちになってしまうもの。どうしてもこうした表現を使わなければならない場合は、「一段と」「まことに」や「後ほど」「その後は」のように言い換えることが必要です。
葬儀に参列する場合は、携帯電話の電源は必ず切るようにします。セレモニーの邪魔になるような音には気を付けましょう。また、葬儀に参加をすると旧友や知り合いの方にお会いすることもあります。
そのような場合でも、挨拶程度にとどめて談笑は控えます。当然、故人のご遺族やご親族、葬儀社の案内係の方も、葬儀の参列者の方に対する注意は余程なことがない限りできません。しかし、内心はどのように思うかは異なります。
ご遺族の方は、故人様との最後の別れに深い悲しみを抱いています。そのようなご遺族の心情を理解して、葬儀ではマナーを守るようにしましょう。マナーを守ることが、何よりの心遣いです。
お通夜やお葬式には、会式10分前には受付を済ませましょう。お焼香などのご案内に備えておくことが一般的です。
訃報は突然の知らせのため、仕事の関係でどうしても遅刻してしまうということもあるでしょう。そのような場合は、ご遺族の方に事前に連絡を入れておきます。お詫びのことも一言添えましょう。
やむを得ない場合以外は、開式に間に合わせるのが基本的なマナーです。お焼香などのお参りを待っているのが苦痛だという方がたまに見受けられますが、順番待ちをするのは、お参りの常識です。そのような自分勝手な言動は、弔意の気持ちを忘れさせてしまうので、参列者のマナーを守りながら、案内に従いましょう。
葬儀に子供を参列させたいという方もいるでしょう。そのような場合は、喪主の方に確認をします。子供は、葬儀の場をくみ取るものですが、長時間大人しくしていることは難しいです。居眠りをしてしまったり、騒いでしまったりすることもあります。そのような子供を連れてくることは非常識だと思う方もいるのです。そのため、子供を参列させる場合は確認しておきましょう。
また、子供を参列させる場合は子供に事前の説明をしておきます。説明をしても、子供なので騒いでしまうこともあるでしょう。そのような場合は、周囲の人に一礼をしてお詫びの意を示します。
子供が騒ぎだしたら、休憩室に一度連れていきましょう。様子が戻らないようであれば、子供は休憩室に預けておいても問題はありません。
携帯電話は電源を切り、仲の良い人と出会っても話は控える。遺族との会話も手短にし、最低限にとどめる。時間通りに到着し、ある程度余裕をもって受付を済ませる。
子どもを連れていく場合は、事前に喪主に確認をとる。子供が騒いでしまうようならお詫びを入れて退出する。
お通夜とお葬式・告別式に招待された場合は、どちらに行くべきか悩んでしまうものです。しかし、故人との関係性によって、どちらに参列すべきか変わってきます。
お通夜は、故人との親交が深い人たちが最期の一夜をともに過ごす目的で執り行われます。そのため、親しい関係者はお通夜、お葬式・告別式に参加します。しかし、お通夜も葬儀の一儀礼として捉えられることが増えてきていて、出席するのが当然というような風習に変わりつつあります。
故人様との関わりが深くなかった場合は、お通夜に出席をせずに、葬儀・告別式に参列しましょう。また、やむを得ない事情で、どちらか一方にしか参列できない場合は、葬儀・告別式に弔問しましょう。
葬儀・告別式の日程に、どうしても都合がつかないというような場合は、お通夜に出席して、故人様との最後のお別れを偲びましょう。お通夜だけに参列する場合は、告別式に参列できないことをお詫びします。受付時に一言、お詫びを伝えましょう。喪主やご遺族は忙しくしているため、お詫びを伝えるために、わざわざ呼ぶのは控えます。
どちらか一方のみに参列するなら、葬儀・告別式に弔問する。
都合がつかない場合は、お通夜のみに出席するのでも良い。ただ一言お詫びを伝えるべき。
お通夜やお葬式に参列する場合の服装について解説します。
男性は、黒色のフォーマルスーツにネクタイを着用します。突然の訃報によりお通夜に参列する場合は、派手な服装は避けた地味な平服であれば問題ありません。
女性は、黒色のフォーマルスーツかワンピース、もしくは地味な色のものを着用します。ストッキングも黒色が一般的ですが「突然の訃報を聞いて、駆けつけて来ました」という意味合いを持たせるためにも、肌色のストッキングにした方が良いという考えもあります。
中学生や高校生の場合は、制服が一般的です。制服がない場合は、白のブラウスに黒色のズボンやスカートを着用させます。黒色であることが望ましいですが、用意できない場合は地味な色でも構いません。乳児などの洋服では、黒色のものは基本的にありません。そのため、淡い色の洋服であれば良いと認められています。
葬儀に参列する際に、服装のマナーを守ることは大切なことです。しかし、最も大切なことは、故人への追悼の意を表す服であること。故人のご遺族の方の場合は、喪家となるため服装に気を付けなければいけませんが、参列者の場合は、お通夜も告別式も地味な平服で構いません。喪服で参列できるようであれば、それに越したことはありませんが、故人を偲ぶ気持ちが何よりも大切です。
服装は故人を偲ぶものであるのが重要なので、基本的に地味な色合いで清潔感のあるもので、平服でも良い。きらびやかなものは避ける。
学生の場合は制服を着用し、制服等を持たない小さな子供の場合は地味な色の服で良い。
お通夜は、故人との最後の夜を過ごすための儀式です。葬儀・告別式の前夜に行われます。
もともと、お通夜はご遺族や故人と親しかった人が集まって、明かりを絶やさずに故人の冥福を祈るものでした。しかし近年では時代の変化に伴い、葬儀・告別式に会葬できない人が故人と最後のお別れをする場という意味合いも持つようになってきました。
お通夜は次の順番に従って、執り行われていきます。
お通夜は、午後6時から執り行われることが一般的です。会場に早く着き過ぎてしまっても、お通夜の準備が間に合っていないこともあります。準備ができていないにも関わらず、顔を出してしまうと、故人のご遺族に気を遣わせてしまいます。そのため、早過ぎず遅過ぎず読経が始まる前には到着しておきましょう。
最初に受付で香典を渡します。袱紗から香典を取り出して、両手で差し出します。受付が設置されていない場合は、奥へと進み、ご遺族の方にお悔みの言葉を添えて香典を渡しましょう。焼香の際に、祭壇に香典を供えることもあります。
受付で記帳を行います。住所・氏名を楷書で記載します。
先客に一礼して、会場に入ります。会場の席順が決まっている場合は、指定された場所に着席します。しかし、一般的には席順が決まっていることは少なくて、会場に着いた順番に着席することが多いです。お通夜の参列者にご年配の方がいる場合や故人様との関係があまり深くない場合は、末席(祭壇から遠い方)に座るようにしましょう。
会場に入る前には、携帯電話の電源を切ります。また、会場に入った後は、私語に慎みましょう。知り合いの方に会場で会うこともあると思いますが、大きな声で笑ったり、楽しそうに会話をしたりするのは、ご遺族の方に失礼になるため控えましょう。厳粛な場にいることの自覚を持つことが大切です。
焼香の順番は、喪主・ご遺族・御親戚・弔問者となるのが一般的です。自分の順番が回ってきた場合は、ご遺族の方と住職に対して一礼して、焼香します。
お通夜の儀式が終了すると、喪主が弔問者をもてなす通夜振る舞いの席が設けられます。通夜振る舞いの席は、故人との思い出を振り返りながら最後の別れを偲ぶ場です。悲しみを和らげる場のため、短時間でも席に着いて、一口でも料理を召し上がるのが礼儀となります。
葬儀・告別式とは、故人に縁のある人々が故人に最後の別れを告げる社会的な儀式を指します。一般的な葬儀では、2日目の午前中に執り行われます。葬儀を執り行った後に告別式を行うのが一般的ですが、現代では時間的な制約などの事情で同時進行で行われることが多いです。
葬儀2日目の大まかな流れとしては、告別式の会場に参列者が入り、告別式が行われた後出棺という形になります。
告別式そのものは、次の順番に従って執り行われていきます。
葬儀・告別式は、故人との最後のお別れを偲ぶ大切な儀式です。そのため、遅刻しないように早めに到着しましょう。受付前にコートやマフラー、手荷物を預かり所で保管してもらいます。
受付についたら、受付係にお悔みの言葉を述べます。袱紗から御香典を取り出して、両手で差し出します。芳名帳に住所・氏名を記入して一例します。
受付を済ませた後は、式場の案内係に従って着席します。着席する前には、携帯電話の電源は切っておきましょう。葬儀で旧友や知り合いに会うこともあると思いますが、式場内では挨拶程度にとどめて、私語は慎むようにします。
住職が会場に入場して、読経が始まります。仏教の場合は、故人様を浄土に導く儀式が執り行われます。宗派によって、さまざまな儀式が執り行われます。
弔辞は進行役に進められたら祭壇に進み、ご遺族・故人様に一礼してから、姿勢を正して心を込めて読み上げます。
読み終えたら、弔辞は元のように包み、祭壇に供えましょう。そして、故人様・ご遺族に一礼をして、席へ戻ります。
最近では、ご遺族の希望がなければ、弔辞を祭壇に供えずに持ち帰ることが多いようです。そのため、葬儀・告別式の前に打ち合わせするようにしましょう。
読経が再び始まります。住職が焼香をした後に、喪主の方・ご遺族の方・ご親族・席次の順で焼香をします。来賓、関係者の焼香が終われば、一般会葬者が焼香します。
自分の順番が回ってきたら、ご遺族の方・住職に一礼をして焼香しましょう。
読経と焼香が終われば、住職は退場となります。
喪主やご遺族の代表者様が会葬者に対して御礼を述べて、閉式となります。
閉式後、ご遺族による故人様との最後のお別れが行われます。会葬者は別室で待機します。最後のお別れが終了したら、棺を霊柩車に納めます。喪主様の挨拶ののち出棺となるため、可能な限り見送りましょう。合掌や黙とう、黙礼など心を込めて故人様を見送りましょう。
葬儀の瞬間は突然訪れます。訃報が届いてからゆっくり準備する時間もないことがしばしば起こります。余裕のある時に、葬儀でのマナーや大まかな流れをつかんでおきましょう。
葬儀は故人を偲ぶ大切な場です。他の参列者の迷惑にならないよう自分の言動や服装にきちんと気を配る必要があります。亡くなった方を悼む場にふさわしい振る舞いを心がけましょう。