大きな式場でたくさんの人々に盛大に参列してもらう、あるいは生前親しかった人たちになごやかに送ってもらう――自分の人生の最後を飾るとき、あなたならどちらを選びますか。
より一般的な葬儀のイメージとはおそらく前者でしょう。芸能人や会社の社長の場合はなおのことです。
しかし近年はニーズの変化にともない、後者のような「身内葬」に代表される小規模な葬儀がみられるようになってきました。今話題の身内葬とは、どのような葬儀なのでしょうか?
身内葬とは、家族や親族、故人が生前に縁が深かった方のみで行う小規模のお葬式のことをいいます。
参列者が少ないため、小規模の会場で葬儀が執り行われます。広義では、このような形態のお葬式のことを「家族葬」と呼びます。一部の葬儀社が「家族葬」を「身内葬」と呼んでいるのです。
この身内葬を選択すると、弔問客に応対する負担が少なくなるため、家族や友人と故人との最期の時間をゆっくりと過ごすことができるというメリットがあります。また、一般的な葬儀は、堅苦しい雰囲気の中で執り行われることが多いですが、身内葬の場合は、アットホームな雰囲気でお別れできるという点が魅力的です。
さらに、他の葬儀と比較すると葬儀費用も安く抑えられるという点から、故人が生前から身内葬を望むというケースも増えてきています。
しかし、身内葬は、故人の生前に深い縁があった方を招待する際に、範囲を決めるのが難しいという問題も生じてしまうのです。招待する範囲を間違えてしまうと、「どうして自分は招待してもらえなかったのだろう」と相手に対して不快な想いをさせてしまうこともあるでしょう。
このように、呼ばなかったことが原因で、その後の人間関係にヒビが入ってしまう原因となってしまうのです。
身内葬は、生前、故人と縁が深かった方のみで行う小規模の葬儀をさす。
葬儀費用が抑えられアットホームな雰囲気で行えるメリットがある一方、招待する人としない人の線引きが難しく、後のトラブルにつながることもある。
家族葬は、葬儀社すべてが展開しているため、多くの人に知れ渡っています。それに対して、身内葬は、いくつかの葬儀社が身内葬としてサービスを展開しているだけのため、浸透していないのです。
このように葬儀の流れは同じですが、家族葬と身内葬は認知度が大きく違うという点があります。
一般的に「家族葬」=「身内葬」と考えて問題はありません。
しかし、家族葬と身内葬の2つのプランを用意している葬儀社も存在します。このような場合は「家族葬」=「身内葬」と考えると大きな問題が出てきてしまうので気をつけましょう。
同じ葬儀社で、それぞれのプランが用意されている場合は、葬儀の内容が異なってきます。家族葬のプランは参列者30人を想定したプランであり、身内葬のプランは参列者60人を想定したプランとなっている場合が多いです。しかし、葬儀社によってプラン内容は大きく変わってくるので、2つのプランが用意されている葬儀社を見つけたら、それぞれのプランの違いを必ず確認するようにしましょう。
基本的に身内葬と家族葬は同じ。しかし身内葬と家族葬の2つのプランが用意されている場合は、プラン内容に違いがあることが多いので要確認。
身内葬の平均的な相場は約100万円となっています。身内葬にかかる費用は、4つの項目に分類することができます。
葬儀一式の費用とは、会場使用料や祭壇など葬儀を執り行うためにかかる費用のことをいいます。希望する祭壇や遺影によって費用は変わってきます。また、施工を依頼する葬儀社によっても費用は変わってくるようです。
式場使用料 | 約15万円 |
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祭壇 | 約20万円 |
お棺やドライアイス | 約5万円 |
遺影・位牌 | 約7万円 |
寝台車 | 約3万円 |
火葬場の使用料や火葬場までご遺体を運ぶ霊柩車の使用料などが含まれます。霊柩車の使用料は、火葬場までの距離で料金が変わってくるため、距離が遠い場合は追加料金が発生することを見込んでおきましょう。また、火葬場には公営と民営があり、公営の火葬場だと市区町村によっては無料で利用できる場所もあります。少しでも、火葬場利用料を抑えたい場合は、公営の火葬場を利用するようにしましょう。
火葬場利用料 | 約5万円 |
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霊柩車の使用料 | 約4万円 |
火葬場の待合室の利用料 | 約1万円 |
通夜振る舞いや精進落としなどの会食にかかる飲食代のことをいいます。このような料理の平均予算は1人当たり5千円です。身内葬の場合は、家族や親せき、個人が生前仲良くしていた友人のみの参加となるため、飲食接待費は、そんなに高額になることはないでしょう。
また、中には料理を自分たちで作り振舞うという方もいるようです。このような場合は、飲食接待費用をもっと抑えることができるでしょう。
また、身内葬の返礼品は1人当たり2千円~3千円程度のものを用意するのが一般的です。
通夜料理 | 約5万円 |
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告別料理 | 約5万円 |
返礼品 | 約4万円 |
軽食代 | 1万円 |
お坊さんに支払うお布施の費用のことをいいます。寺院へ支払う費用は、葬儀の形態によって変わることはありません。
読経料 | 約20万円 |
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戒名料 | 約0円(戒名の位によって金額が変動する) |
御膳料 | 1万円 |
お車代 | 約1万円 |
身内葬の費用(寺院費用含む)の平均はおよそ100万円。ただし葬儀社によって値段設定が異なるので、個別に確認すること。
身内葬は次のような流れで執り行われます。
医師から死亡診断書を受け取り、亡くなったことを確認したら、葬儀社に連絡を入れます。病院または自宅(お亡くなりの場所)まで、寝台車にて葬儀社が迎えにきてくれます。
ご逝去後、故人さまを安置する必要があります。安置方法は、お預かり安置・ご自宅安置、付き添い安置の方法があります。
翌日、通夜式の時間に合わせて、葬儀社が故人さまのもとへお迎えに上がり、故人さまをお棺に納めます。一般的には、ご家族の立ち合いで納棺しますが、ご家族の立ち合いなしで葬儀社に依頼することもできます。
故人との別れを惜しんだり、故人の霊や遺族を慰めたりする儀式として夕方事より通夜式が執り行われます。翌日に執り行われる告別式まで、故人さまとゆっくり時間を過ごせるように、親族控室が会場に用意されていることが多いです。
故人さまにお別れを告げる儀式です。参列していただいた方への挨拶や、告辞・弔電なども披露し、最後に故人さまの周りを生花で飾り、お別れを伝えます。
初七日とは、故人さまの旅立ちを見送る儀式です。お坊さんを手配している場合は、日程を繰り上げて初七日の法要も同日に執り行われます。
火葬の時間に合わせて、故人さまを火葬場まで搬送します。
火葬前に最期のお別れをして、火葬を行います。火葬後には、骨を骨壺に納めて火葬式は終了となります。
葬儀終了後に、葬儀社から埋葬許可証を受け取ります。許可証と引き換えに、現金払いの場合は料金をお支払いします。
身内葬は、ご近所や仕事関係、顔見知り程度の知人には声をかけずに、家族や故人と深い付き合いがあった親友など限られた人数で執り行われます。そのため、弔問者の対応を行わなくて済み、故人との最期の時間をゆっくり過ごすことができるというメリットがある葬儀形態です。しかし、そのような身内葬を執り行う際にも注意点はあります。
故人の遺志で身内葬を選択した場合は仕方ないかもしれませんが、ご遺族の遺志で身内葬を選んだ場合は、周囲の人からクレームが入る恐れもあります。
故人が深い関わりがあった方は、キチンとした形でお別れがしたいと考える方も多いはずで、「どうして亡くなったことを教えてくれなかったのか」「どうして葬儀に呼んでくれなかったのか」という事態になりかねません。
身内葬を選ぶ場合は、葬儀に呼ぶ相手を間違えてしまうと人間関係のトラブルを招いてしまうこともあるため、細心の注意を払うようにしましょう。本当に親しかった知人が誰か曖昧な場合は、家族だけで執り行った方が人間関係のトラブルを防ぐことができるでしょう。
葬儀が一通り終わった後に「身内葬にて行いました」と訃報を葬儀後に出すことがあります。そのような場合、故人と生前付き合っていた方が弔問に来てくれることもあります。
このような弔問者は、故人に対して強い気持ちを持っている方です。そのため、その好意をありがたく頂戴して、対応するようにしましょう。
身内葬の葬儀を終えた後でも、公的な手続きや相続手続き、故人が使用していた部屋の整理などやるべき事はあります。そんな中での弔問者の訪問は、大変だと思うかもしれません。しかし、故人が生前お世話になった方に対しては、丁寧な対応を心がけるようにしましょう。そのような対応を取ることで、故人さまも喜びます。
あらかじめ逝去を伝える場合は、身内葬を行う旨と参列辞退を明記して訃報をお知らせします。身内葬と書いていても、葬儀や告別式の日時や場所が含まれている内容を伝えてしまった場合は、弔問に訪れてくる方も出てくるでしょう。
だから、詳細の情報は身内葬に招く方のみに通達するようにしましょう。その際に、他の方には詳細の情報を伝えないようにして欲しい旨も伝えておくと良いです。招待する参列者の方も事情を理解して、配慮してくれるでしょう。
キチンとした意思が伝わらないと、香典を持参してくる方や弔問してくる方が想像以上に多くなってしまい、返礼品を用意したり会食を用意したりしなければいけない事態になってしまいます。
そのため、対応に追われて故人との最期の時間をゆっくり過ごせなくなってしまうといったトラブルもたくさん起きています。そのような事態を招かないためにも、訃報連絡時には配慮するようにしましょう。
身内葬をする場合は参列者を選ぶ必要が出てくるため、選ぶ相手を間違えないようにし、選ばなかった相手にも配慮することが大切。連絡内容にも注意を払わないと、自分たちが大変なことになる。
葬儀が終わった後でも、弔問客へは丁寧な対応を心がけること。
身内葬に代表される小規模な葬儀は、近年注目を浴びています。
身内葬は一般的な葬儀に比べれ費用が抑えられたり堅苦しい雰囲気で行う必要がないメリットがありますが、その分注意するべき点が多いのも事実です。メリット・デメリットを考慮したうえで、ご遺族や故人の遺志に寄り添った葬儀プランを選ぶようにしましょう。