少子化や高齢化などに伴い、人生の最後を飾る葬儀の形式にも変化がみられるようになりました。
近年では「身内葬」や「家族葬」といった名前の葬儀形式もよく聞かれるようになりました。
果たして、この2つの新しい葬儀形式にはどのような違いがあるのでしょうか。
身内葬に参列した際のマナーや香典などに違いはあるかのか気になりますよね。
当記事では身内葬について解説をしていきます。
この記事のポイント
身内葬とは、家族や親族、故人が生前に縁が深かった方のみで行う小規模のお葬式のことをいいます。
参列者が少ないため、小規模の会場で葬儀が執り行われます。
葬儀費用が抑えられアットホームな雰囲気で行えるメリットがあります。
一方で招待する人としない人の線引きが難しく、後のトラブルにつながることもあります。
社葬や大規模な葬儀が行われることが年々少なくなっています。
最近では家族や親族のみで行う小規模な葬儀で故人を送る形式が増えています。
親族だけで葬儀を行いたいが、家族葬か身内葬の方か悩んでしまう人もいると思います。
しかし基本的に身内葬と家族葬はどちらも、同じ小規模形式の葬儀になります。
小規模葬儀は、最近になってから行われるようになった比較的新しい形の葬儀です。
そのため、まだ呼び方に統一性がないということから呼び方が分かれているということです。
葬儀の形式には「一般葬」「家族層」「友人葬」「火葬式」「直葬」などがあります。
その中で「身内葬」を選択する人が増えていますが、選ばれる理由とは何なのでしょうか?
ここでは、身内葬ならではの3つのメリットをご紹介します。
一般葬の場合は、多くの方が参列するため、「おもてなし」「しきたり」が重視されます。
しかし、身内葬は限られた人のみなので、自分達の好きなスタイルで葬儀をあげることができるのです。
例えば、故人が生前に大好きな音楽を流したり、大好きな食べ物を供えたりすることもできます。
また、僧侶の方を呼ばないという方法も選択できます。
このように、内容を自由に決められるのは、身内葬ならではのメリットです。
一般葬の場合、ご遺族は故人を失った深い悲しみ中で葬儀を仕切らなければいけません。
慣れない葬儀に追われてしまってゆっくりお別れすることができなかったと悔やむ人も少なからずいます。
身内葬は、受付手続きや参列者に気を遣わずに済むため、故人とゆっくりお別れすることができます。
故人との想い出をゆっくりと思い返しながら、最期のお別れをしたい方に最適です。
身内葬は一般葬と比較すると参列者が少ないため、お焼香などに要する時間が短縮できます。
また、家族や友人だけで執り行われるため、受付業務が省略できます。
一般葬の場合は、参列者に訃報の連絡をしたり、食事や香典返しなどの下準備に追われたりします。
しかし、身内葬は準備の必要がありません。
近所の方には、事後報告でもマナー違反になりません
昔から行われてきた一般葬は、世間体やしきたりを重視する方が選ぶことが多いです。
一般葬と身内葬で迷われる方が増えてきていますが、なぜ悩むのかを見ていきましょう。
一般葬とは故人が生前お世話になった方々を呼んで、盛大に見送る葬儀のことをいいます。
古くから行われていた形式であり、生前にお世話になった方に対して、一度で挨拶を済ませることができます。
参列者の人数は、100名を超えることも多いです。
一般葬の最大のメリットは、繰り返しになりますが、生前にお世話になった方に対して挨拶ができることです。
身内葬は会社関係者や近所の方の参列を辞退します。
そのため、四十九日後に弔問者がポツポツと来て、後日弔問者に対してお礼をしなければいけません。
そのような家族葬と比較すると、一度で挨拶を済ませられるため、スッキリするでしょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
一般葬 |
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身内葬 |
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身内葬も通常の葬儀と同様に通夜と告別式の2日間にわたって行なわれるものです。
前日の準備までの流れと、通夜、告別式の当日の流れについて説明します。
ご臨終から葬儀を準備する段階までは、具体的に以下の流れで進んでいきます。
臨終から葬儀への流れ
病院で危篤状態を告げられた時に、速やかに親族や家族に連絡をします。
連絡をする親族は、身内葬に参列をお願いする親族になります。
そして、危篤になったことを知らせて、葬儀へ参列する準備をしてもらうことになります。
医師の診察が終わり、臨終の宣告を受けた後に、ご遺体は病院内の遺体安置室に移動されます。
臨終の宣告を受けた後は、病院から自宅や斎場に遺体を搬送してもらう業者に連絡をしましょう。
葬儀社に連絡をしてから、病院に到着するまでそれほど時間はかかりません。
ただし道路状況や病院の場所によっては、1時間~2時間程度の時間がかかることも考えられます。
身内葬が希望の場合は、小規模葬儀をおこなってくれる業者を選ぶ必要があります。
その際、葬儀料金の見積を必ず業者から受け取るようにしてください。
料理や返礼品などの飲食接待費については、葬儀見積に組み込まれていないことが多いです。
そのため、総額を知りたい場合は、飲食接待費の概算を出してもらうのがいいでしょう。
その他にも、お布施などの寺院費用がかかりますので、菩提寺に連絡した時に聞いておく必要があります。
葬儀社のスタッフと一緒に、ご遺体を納棺します。
身内葬の場合は、集まる親族の数が少ないこともあります。
そのため、スタッフが中心になって納棺することになりますが、その際は遺体に手を添えるなどして参加をします。
納棺時に、自宅に祭壇を設置します。
お通夜から葬儀当日の具体的な流れは、以下のようになります。
この記事のポイント
亡くなられた日の翌日に通夜が行われます。
当日の夜に仮通夜が行われることもありますが、友引では火葬が行われない土地もあります。
そのため、火葬する前の日に通夜が行われると考えておきましょう。
参列された方のお焼香が終わった後には、身内葬でも通夜振る舞いを行われることが多いです。
大勢の参加者がいるわけではないので、通夜振る舞いというよりも身内での会食という感じになります。
火葬の当日の朝に告別式が行われます。
通常の葬儀では、告別式が終わってから、別会場で献花をしたり最後のお別れをすることが通例です。
しかし身内葬の場合は、告別式の会場内で参加者全員がお別れ会まで行うことが多いです。
棺を霊柩車に乗せて火葬場へ移動します。
身内葬に参加された方達も葬儀社が用意したバスや自家用車などで、一緒に火葬場へ向かいます。
火葬される前に、僧侶から最後の読経がおこなわれ、身内の者たちが最後の焼香を行い、遺体を火葬します。
火葬された遺体を参加した親族で骨壺に拾い上げて収骨します。
そして、終わった後はもう一度告別式の会場となった斎場へ戻り、繰り上げ法要を行います。
7日後に初七日法要を行うのですが、告別式の日に初七日法要を繰り上げて行うことが普通になっています。
つまり、葬儀の日の後の法要は、四九日法要が最初の法要になるということです。
初七日法要が終わった後は、集まった親族で精進落としの会食を行います。
通夜振る舞いと同様に、故人を偲ぶ食事会といったような形式になります。
故人との関係性
故人との関係性 | 金額相場 |
両親 | 5~10万円 |
祖父母 | 1~5万円 |
兄弟 | 3~5万円 |
孫 | 1~3万円 |
その他の親族 | 5,000円~1万円 |
身内葬の場合、規模が小さいことから「香典の金額も変わるのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、ほとんどの場合参列する方の人数は少なくても、一般葬と同様の形式で葬儀を行います。
そのため、家族葬であっても香典を用意する場合には、香典の金額は一般葬と同じ程度になります。
身内葬で葬儀を行う場合は、身内以外の参列や香典を辞退するケースも多いです。
その場合は、葬儀前に辞退の旨が伝えられるのが一般的です。
香典の辞退について伝えられていない場合は、香典を用意するのがマナーになります。
香典袋の書き方
香典を用意する、渡す際にもいくつか気をつけなければならないマナーがあります。
そのマナーについて解説をしていきます。
香典を用意する、渡す際にもいくつか気をつけなければならないマナーがあります。
そのマナーについて解説をしていきます。
注意する宗教・宗派
香典袋(不祝儀袋)は外袋と中袋で1セットになっているものが一般的です。
まずは、外袋の書き方について説明をします。
外袋には表書きを記入します。
表書きというのは、相手に対して贈り物を送るときの目録が簡略化されたものです。
亡くなられた方の宗教や、亡くなられてからの日数の経過によって表書きの書き方も変わります。
「御霊前」が表書きとして使われます。
四十九日の法要が終わるまでは、魂はこの世にいらっしゃると考えられているからです
「御香典」や「御香料」という表書きを使うことも問題はありません。
四十九日が過ぎた後は浄土に召されて仏になりますので、表書きは「御仏前」を使います。
現在では表書きが印刷されている熨斗袋もありますので、購入する際には間違えないようにしてください。
浄土真宗では、亡くなられたら即刻浄土に召されて仏になると考えられています。
そのため。表書きは「御仏前」になります。
浄土真宗以外では、四十九日の法要が終わるまで「御霊前」です。
しかし、浄土真宗の場合には葬儀を行う段階で「御仏前」という表書きになりますので注意が必要です。
神道では「玉串料」「御玉串料」の表書きを使います。
気を付けなければならないのは、蓮の花が描かれている不祝儀袋を使用しないことです。
蓮の花が描かれているものは、仏教用になります。
そのため、神道やキリスト教などの仏教以外で使用するのはマナー違反になります。
キリスト教の場合は、カトリックとプロテスタントで表書きが違います。
亡くなられた方がカトリックの信者であれば表書きは「御花料」や「御ミサ料」。
プロテスタントの信者であれば「御花料」「献花料」「忌慰料」を使います。
カトリックの場合は表書きが「御霊前」でも問題はありません。
しかし、プロテスタントではマナー違反ですので、宗派がわからない場合は使わない方がいいでしょう。
宗派がわからない場合には、どちらの場合でも共通している「御花料」を使用するのが無難でしょう。
表書きの下には中央に名前を記入します。
弔辞の場合は薄墨の毛筆で名前を書くのがマナーとなっています。
また、名前は姓だけでなく、フルネームで記入します。
市販されている中袋は表面には何も表記されておらず、裏面に住所、氏名、連絡先を記入する欄があります。
外袋とは違い毛筆ではなくボールペンで記入しても問題はありません。
記入欄がない無地の中袋の場合は、表面に香典の金額を記載し、裏面に住所、名前、電話番号を書きます。
香典の金額を書くときはアラビア数字ではなく、漢数字を使うのが一般的です。
金額の上には金をつけて1万円ならば「金壱萬円」、5千円ならば「金伍阡円」と記入します。
香典袋は裸のままバックに入れるのではなく、必ず袱紗(ふくさ)に入れておきましょう。
香典を中袋に入れるときは、表面に対してお札の向きが裏になるようにします。
お札を取り出したときに、描かれている肖像画が見えないように入れるということです。
お札の上下については、地域によって差があるので、それほど気にする必要はありません。
また、香典で包むお金は新札ではないことが望ましいとされています。
結婚式や入学祝いなどの祝儀の場合は、新札を用意して祝儀袋に入れます。
しかし、不祝儀のときに新札を用意することは、不祝儀に対して備えていたと思われてしまいます。
そのため、使い古されたお金を入れることが望ましいです。
用意できるお金が新札しかない場合は、折り目をつけることで、古いお札と同様に使うことができます。
身内葬に参列するときの服装
性別や年齢によって身内葬参列に適した服装を考えてみましょう。
一般葬に参列する場合は、男性の基本の服装は喪服になります。
しかし、身内葬の場合は、喪主も正式な喪服を着用しません。
そのため、参列者は喪主と同等、もしくは格式の低い準喪服を着用するのがマナーとなっています。
ブラックスーツで光沢のないものや、ダークグレーのスーツがいいでしょう。
スーツの下は白いワイシャツが基本で、色つきのシャツは避けてください。
襟元もシンプルなレギュラーカラーのものが好ましくボタンダウンダウンシャツなどは相応しくありません。
黒のワンピースやアンサンブル・スーツ、パンツスーツなどで、光沢がないものが好ましいです。
基本的には無地ですが、シンプルな織柄があるものでも大丈夫です。
素材に透けがあまりないものが好ましいです。
スカートの丈は、ちょうど膝が隠れるくらいの長さの短くないものを選んでください。
インナーも上着と同様に黒の素材を着用し、こちらも柄のない無地のものが基本です。
中学生、高校生で制服があるならば、制服着用での参列が基本になります。
私服の場合は、男子ならば上着に暗色系のジャケットなどを着用し、インナーは白いYシャツかポロシャツ。
女子は、グレー系のジャケットにパンツやスカートを合わせたり、暗色系のワンピースなどがいいでしょう。
制服のない小学生や、まだ未就学の小さな子供については、明るすぎない色使いの私服であれば大丈夫です。
しかし、やはり黒系、ダーク系の色使いのものを着用したいところです。
キャラクターが描かれているような私服はなるべく着せない方がいいです。
この記事のポイント
現代ではより小規模な形で、親しい人のみが集まりゆっくりと故人を悼む形の葬儀が増えています。
一般的な葬儀とは流れが異なることもあるので、身内葬の流れをおさえておくと良いでしょう。