葬儀の儀式として告別式が一般にも行われるようになったのは、大正時代になってからです。それまでは、葬儀が終わった後に遺体を埋葬する墓地や、火葬場まで葬儀の参列者で隊列を組んで送る、野辺送りが一般的でしたが、関東大震災の後、都市部では葬列形式を廃止し、自宅で告別式を行うようになりました。
葬儀への参列者が少ない都市部と違い、地方都市は参列者が多かったため、自宅での告別式が浸透するのは、これよりも遅く、戦後の高度成長期時代に自宅告別式が一般的になったと言われています。
葬儀は、宗教儀式であるため、寺院の僧侶が主導するのに対し、告別式は喪主や遺族が主導するのが一般的です。このページでは、告別式の流れ、告別式のマナー、告別式に必要な物について解説します。
まずは、一般的な告別式の流れについて解説します。
告別式は、お通夜の翌日の日中に行われることが多いです。通夜式を斎場で行い、告別式も同じ会場で行う場合は、多くの部分を前日の通夜式から引き継いで行われますが、通夜を自宅で行い、告別式を斎場で行うなど、会場が異なる場合は、当日の午前中に会場の設営や準備が必要になります。
告別式が終了してすぐに、喪主は火葬場に移動することを念頭において、葬儀スタッフや世話役と準備を行わなければなりません。
受付を担当する方や、会計を担当する方など、親族や知人の方に役割分担をお願いし、告別式がはじまる30分ほど前から受付を開始します。
金銭的なトラブルを防ぐために、会計にはごく近い親族や、信頼のおける知人の方にお願いするのがいいでしょう。
告別式が開始される前に、参列される方は指定された席に着席します。
祭壇に向かって中央は通路となり、通路を境にして右側と左側に席が分かれます。祭壇に向かって右側には、遺族や親族の席になり、左側が知人や職場の方などの席になります。
告別式が開始される時間になると、中央の通路を通って僧侶が入場します。僧侶入場の際、参列した方は合掌し、黙礼で迎えます。
司会を務める葬儀スタッフが開式の挨拶を行います。
僧侶が読経を行います。通夜の時には読経の時に焼香を行いますが、告別式では読経の後に弔電などを紹介してから、再び読経を行いますので、焼香を行うのは2回目の読経のときになります。
最初の読経の間は、参列者は合掌し、故人の冥福を祈ります。
告別式の前に予め弔辞をお願いしていた遺族の代表や故人と親交の深かった人が弔辞を述べます。
葬儀司会者が弔辞を述べる方を紹介するので、紹介された方は壇上に上がり、弔辞を奉読し、読み上げた弔辞は祭壇に供えます。
弔辞の後に、葬儀司会者が弔電を読み上げますが、全ての弔電を読み上げるのではなく、代表として数通の弔電を読み上げる形になります。事前に読む弔電は、事前に喪主との相談で決めておきます。その他の弔電については、送られた方のお名前だけ読み上げて、その後祭壇に供えます。
弔辞の後に、再度僧侶が読経を行います。この時に、参列者は順番に焼香を行うことになります。
焼香の順番は、故人と関係が近い方からの順番になりますので、最初に喪主、その次に遺族、親族、参列者という順で行われます。焼香の作法は宗派によって違いがあり、1回もしくは3回行われることが多いです。故人の宗派がわからない場合は、一回の焼香を行っても失礼にはあたりません。
参列者の焼香が終わると、僧侶は入場したときと同じ中央通路を通り、退場します。入場時と同様に参列者は合掌し、黙礼をもって僧侶を見送ります。
告別式は、僧侶の読経と参列者の焼香が終わるまでとされていますので、僧侶が退場した後に、司会者もしくは代表者が閉式の挨拶をして締めくくります。
告別式の後に、親族や親しい方が残り、故人との最後のお別れを行います。棺を参列者で囲み、お花を添えたり、故人と所縁の深い副葬品を棺に納めます。
お別れの儀が終わった後に、棺の蓋が閉じられ釘が打ち付けられますので、故人の顔を見るのはこれが最後になります。
親族や遺族の中から男性5.6人が棺を持ち上げて霊柩車まで運びます。喪主は棺を持ち上げる役目には加わらず、棺を霊柩車に運ぶ後に位牌や遺影を持って続きます。
告別式に参列する時に気を付けなければならないマナーについて紹介します。
参列者が多い場合、受付が関係者別に分かれていることもありますので、自分が該当する列を確認し並ぶようにします。
記帳の際に、お悔やみの言葉を伝え、香典を渡しますが、通夜に参列していて既に香典を渡している場合は、記帳時にその旨を受け付けの担当者に告げます。記帳を済ませた後は、返礼品を受け取り式場内の席に着席して、式の開始を待ちます。
焼香は遺族から順番に行っていくので、進行方向を一定に保つ必要があります。葬儀のスタッフから焼香までの順路と、焼香した後の順路について説明がありますので、それに従うようにしてください。
焼香の作法は宗派によって違いがあり、1回もしくは3回行われることが多いです。故人の宗派がわからない場合は、一回の焼香を行っても失礼にはあたりません。
遺族は出棺後に火葬場で最後の別れを行いますが、参列者にとっては出棺のときが、故人を見送る最後の場になります。霊柩車が長いクラクションを鳴らして出発する時は、合掌して故人の最後の姿を見送り、ご冥福を祈ってください。
遺族や親族の方以外でも、故人と関係の深かった参列者は火葬場への帯同をお願いされることもあります。故人との本当の最後の別れとなるので、お願いされたらなるべく引き受けるようにしましょう。
火葬される前に、僧侶が読経をし、最後の焼香を行います。棺が焼却炉に入れられた後は、火葬が終わるまでの間、待合室で軽食を取りながら待機します。約1時間程度で遺体は焼き上がりますので、アナウンスがあったら骨上げの場所へ移動します。小さく砕かれた故人の骨を二人一組で持ち上げて骨壺にいれます。
最近では火葬場から自宅や斎場に戻って、初七日法要を繰り上げて行うのが一般的になっています。亡くなられてから7日間というのは、故人が三途の川にたどり着くまでの期間とされており、本来は亡くなられてから7日目に行うのものですが、近年は、様々な事情で法要に集まることができない方が多くなったため、葬儀と同日に行われることが多くなってきました。
葬儀と同日に行われるものの、葬儀と法要は別という考えが一般的なので、初七日法要に参列する場合は香典を用意します。葬儀と同様に受付が設置されているので、受付の方に不祝儀袋をお渡ししましょう。
告別式に参列するときの服装マナーについて説明します。
男性の服装は黒のスーツが基本になります。ダブルでもシングルでも構いませんが、上下で色違いになるものは避けた方がいいでしょう。ネクタイは弔辞用の黒無地でネクタイピンは使用しません。靴はシンプルで結びのある革ひも靴が基本の服装となっています。
和装で参列される時は、黒無地で5つ紋染め抜きが基本になります。洋装で参列される時は、黒もしくは濃紺のスーツかワンピースを着用し、ブラウスは柄のない白か黒のシンプルなものを下に合わせます。ストッキングと靴も黒色のものを用意してください。
女性が気を付けなければならないのは、アクセサリーです。なるべく、結婚指輪以外は外して出席するのが無難ですが、どうしてもアクセサリーをつける場合は、金素材のものは避け、銀素材のものや真珠のアクセサリーに変えて参列します。
子供の場合、葬儀参列のために喪服を買い揃えることは少なく、小学生以上で学校の制服がある場合は、制服で参列するケースが多いです。
まだ小学生になっていない、未就学児の場合は七五参の時に使用したスーツなどで構いません。また、赤ちゃんの場合は着ぐるみを白や薄い色の無地のものにするだけで、特に服装について気に掛けることはありません。
告別式に持参する持ち物について説明します。
焼香の際や、読経の際に合掌する時に数珠は必要です。気を付けなければならないのは、数珠を用意できなかったり、参列時に忘れてしまった時。
数珠は持ち主の分身とされていますので、他の人のものを借りることはマナー違反になりますので、数珠が無い時はそのまま合掌を行うのがいいでしょう。
手を拭くだけではなく、涙を拭いたりするため、葬儀に参列するときに持参するハンカチは目につくものです。基本的には白色無地のものがよいとされていますが、黒色でも特に問題はありません。
白のハンカチが汚れるのが気になる方は、複数枚用意して、人に見せる場面では白のハンカチを使うようにした方がいいでしょう。
香典を入れるために用意する袱紗は様々な色や種類がありますが、葬儀の時には寒色系の紺や緑、紫といったものを用意します。
また、中に入れる香典の金額により袱紗の種類は変わります。
不祝儀袋に新札を入れるのは、予め不幸があることを予期していたことになるので、香典に使用するお金はなるべく使い古したお札を使うのがいいでしょう。
告別式に持参する香典の金額は故人との関係の深さや、参列される方の年齢によって変わります。
故人との関係 | 参列する方が20代 | 参列する方が30代 | 参列する方が40代以上 |
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祖父母・配偶者の祖父母 | 10,000円 | 10,000~30,000円 | 10,000~30,000円 |
両親・配偶者の両親 | 30,000~100,000円 | 50,000~100,000円 | 50,000~100,000円 |
兄弟姉妹・配偶者の兄弟姉妹 | 30,000~50,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
叔父・叔母 | 10,000円 | 10,000~30,000円 | 10,000~30,000円 |
友人・知人 | 5,000円 | 5,000~10,000円 | 5,000~10,000円 |
職場の上司 | 5,000円 | 5,000~10,000円 | 5,000~10,000円 |
職場の部下 | 10,000円 | 10,000~30,000円 | 10,000~30,000円 |