葬儀が行われている間、門前に提灯を飾ったり祭壇に提灯を供えたりする風習があります。提灯を飾るのはどのような意味があるのでしょうか?また、葬儀で使用した提灯をそのまま初盆で使ってもいいものなのでしょうか?
この記事では、葬儀用の提灯についてわかりやすく解説します。
もともとは暗い夜道を歩く時のために、竹ひごを組み合わせた上に薄い障子紙を貼り、中に燈した蝋燭で道先を照らすために利用されていたものです。
街灯ができたり、懐中電灯が主流になってからは夜道を照らすという本来の目的よりも、お盆や葬儀の際の飾りとして利用されることが多くなりました。
提灯(ちょうちん)の提と言う字は「手で持つ(提げる)」という意味ですが、手で持つ提灯は手提げ提灯と呼ばれ、葬儀のときに祭壇におく灯りは灯篭と呼んでいます。
様々な形状の提灯がありますが、葬儀用でよく使われるのは長型提灯と呼ばれる楕円形のものです。盆提灯では、長型の他に丸型も使われることが多いです。
葬儀のときに門前に提灯を飾ったり、祭壇に灯篭を供えて灯りを燈すのは故人が安らかに眠って欲しいという思いが込められています。
提灯を門前に飾る場合は、葬儀の日から49日までの間です。祭壇に飾る場合は通夜から告別式の間供物として飾られます。祭壇の左右に同じ文字が書かれた提灯を一対飾ります。
お盆の提灯には絵が描かれているものが多いですが、葬儀用の提灯には絵ではなく文字が書かれています。
家の門前に提灯を飾る場合によく使われる文字は「忌中」「忌」です。家族が無くなり喪に服していることを表しています。(四十九日まで)浄土真宗では「忌中」の文字を使わず、提灯に文字を入れる時は「還浄」という言葉を使います。
式場の祭壇に飾る場合は「御霊燈」「御神燈」などがよく使われる文字です。
式場や家の中に供える提灯は障子紙で作られたものが多いですが、門前など外に飾る場合は、風雨や汚れに強いビニール素材の提灯が使われます。
提灯の中には蝋燭立てはありますが、門前に飾る場合提灯の中の蝋燭に灯りを燈す習慣はありません。
祭壇に供えた提灯は葬儀が終わった後に式場で処分してもらいます。家の門前に飾った提灯は四十九日法要の時にお焚き上げで燃やすことが多いです。
四十九日後に初めて迎えるお盆「初盆」でも提灯を飾る風習がありますが、葬儀で使った提灯を取っておいてそのまま使うことはありません。
葬儀の提灯は「故人が安らかに成仏できることを祈る」ために飾るもので、初盆に飾る提灯は「故人が霊になって初めて家に戻ってくるときに迷うことがないように」目印として灯りを燈すためで、同じ提灯でも飾る目的が違うからです。
お盆の提灯は門前や仏壇前に道しるべとして飾るだけではなく、お墓参りのときに手提げ提灯を持ち、迎え火のように祖先の霊を家まで案内するという慣習もあります。
葬儀の提灯は、故人様の安らかな眠りを祈って飾るものです。四十九日法要まで使えますが、故人様があの世へ無事に旅立った後は使用できません。そのため、お盆で同じ提灯を使うことはありません。このように、提灯を使う意味を把握しておけば、手厚い供養ができるはずです。ぜひ、これを機会に提灯の意味を覚えておきましょう。