新型コロナウイルスの影響で人との交流が制限され、葬儀やお墓参りでの帰省も難しくなりました。「必要急」である葬儀や法要は緊急事態宣言下でも行われますが、お彼岸やお墓参りに関しては個人の判断に委ねられています。
ある調査では、コロナ禍でもお彼岸やお盆のお墓参りだけはしたという人が多いという結果が出ました。一方で、コロナ禍で「不急」と判断したのか、そもそもお墓参り自体に行かなかったという人の割合も増加。ここでも感染リスクと慣習とのせめぎあいが起こっていました。
お彼岸は3月と9月、春分の日と秋分の日を「中日」(ちゅうにち)とした前後7日間の時期です。元々は「浄土」は西にあると考えられていたため、太陽が真西に沈む春分の日が一番浄土に近い、とお彼岸の風習が根付きました。初日は「彼岸の入り」と呼ばれます。ニュースで聞いたことがある人も多いのでは?
各寺院では彼岸法要が行われます。実はお盆の精進棚のように各家庭に決まった行事があるわけではなく、宗派でそれぞれ違います。お墓の掃除、お参り、そしておはぎやぼたもちのお供えが一般的です。
おはぎとぼたもちの違いは主に名前。「牡丹」は春、「萩」は秋の花です。どちらももち米とあんこで作ったお菓子ですが、春はぼたもち、秋がおはぎになります。
おはぎは粒あん、ぼたもちはこしあんという違いもありますが、これは元々小豆の収穫時期が影響しているようです(諸説あり)。小豆の収穫時期が近い秋は、皮も柔らかく食べやすい。逆に長期保存となる春は、潰してなめらかにする必要があるそうです。
小豆の赤い色は魔をはらうとして、古くから縁起ものに使われてきました。京都の夏には「水無月」という氷を模して小豆をのせたお菓子を食べることも有名です。また、昔は砂糖自体、高価で貴重なものだったため、小豆と砂糖をふんだんに使ったお菓子は、先祖への敬意を示していたと考えられています。
法要やお墓参りに外出する時はマスクを着用する、お互いに距離を取り、大声でしゃべることは控える、換気と手指のアルコール消毒をこまめに行う、体調の悪い時は外出しない。コロナ禍でのお彼岸でも、気をつける対策自体は日々同じです。
ただ、お墓では掃除用具を共有することもあります。基本的に寺院側も対策をしているものですが、接触感染を防ぐために注意しましょう。木綿などに付着したウイルスは2~3日残留し、プラスチックや金属は死滅まで一週間ほどかかります。
おはぎやぼたもちも、手作りの場合はリスクがゼロではないと認識しておくことが大切です。
新型コロナウイルスの感染状況は刻一刻と変化しています。高齢者がいる、家族の感染リスクが高いなど、事情が深刻な場合は自宅でお彼岸を行い、お墓参りは時期をずらしても良いのではないでしょうか。季節の行事は大切ですが、自分や家族の命を守ることが第一。柔軟な対応をもって、ご先祖様を供養しましょう。