新型コロナウイルスの猛威は未だ収束せず、変異型ウイルスなど、新たな脅威すらも誕生しています。必要急とされ、緊急事態宣言下でも行われる葬儀ですが、その形はかつてないほど急速に変化しています。リモート葬儀は、コロナ禍において、感染リスクのない参列方法として登場しました。実際に体験された方にお話を伺いました。
東京在住で、遠方の葬儀への参列を断念したNさん
東京都にお住まいのNさんは、山陰地方のご出身。大学から東京に出てきていましたが、祖母と仲が良く、お盆休みには毎回帰省していたそうです。
Nさん「2020年はお盆も正月も帰省を断念しました。そうしたら、祖母が亡くなったという連絡をもらって」
東京は緊急事態宣言の真っ只中。参列したいという思いでしたが、地元の風潮もあり、家族に止められたそうです。
Nさん「東京や大阪、都市部で感染者数が増えてきた時でしたから。東京から息子が帰ってきたなんてご近所さんに知られたら、と家族が不安がってしまいました。別に村八分にされるとかはないですけど、やっぱり気を遣うじゃないですか」
ただでさえ、家族みんなが大好きだった祖母が亡くなり、精神的にもつらい時期。さらに消耗させることはない、と帰省は断念しました。
Nさん「やっぱり、悲しかったですよ。なんで直接お別れ言えないんだろう。生きてるおばあちゃんに会ったの、一昨年で最後だ……なんてショックでした。もっと帰っとけばって、ずっと後悔していましたね」
当初は、喪主であるNさんの父は、リモート葬儀を行うことは想定していなかったそうです。しかし、昔よくNさんが遊んであげていた大学生の親戚が、通話アプリLINEを使ったリモート参列を提案、葬儀社との打ち合わせの上で、協力してくれることになりました。
Nさん「その手があったなって、結構びっくりしましたよ。大学生の子が、スマホスタンド用意してくれて、ビデオ通話で参列しました。葬儀社の方がちょうどいい場所に置いてくれたので、好きだった花に囲まれている祖母の遺影がよく見えてね」
お棺の中の祖母との対面も、画面越しだができたそうです。
Nさん「その子がスマホ運んでくれて、フタが閉まる前に見せてくれました。眠ってるみたいに安らかな顔してる祖母を見れて、よかったです」
火葬場は撮影自体がそもそも禁止なところが多いです。Nさんの地元でも同様で、出棺までを見守りました。
無事にリモート葬儀の参列を終えたNさん。葬儀後に、思わぬ交流が生まれたのだとか。
Nさん「火葬場から帰ってきた親戚たちで、改めてビデオ通話をしました。思い出話をして楽しかったです。特に、田舎のおじさんたち、リモート葬儀なんて初めて経験するでしょう。もう面白がっちゃって、妙に盛り上がりました。無邪気な幼稚園児だった甥っ子が小学生になってて、妙に照れてるんですよね。そういうの見れてよかったです。多分帰省してたら、感染症予防も兼ねて日帰りだったと思うんで」
リモート葬儀というものがピンと来ていなかったNさんでしたが、参列後は印象が変わったそうです。
Nさん「葬儀をライブ配信している、みたいなニュースとかありましたよね。正直違和感があるというか、どうなんだろうって思っていました。でもオンライン飲み会じゃないですけど、こうしてなかなか会えない地元の親戚と話せるのは面白いなって。飛沫感染心配しなくて良いですし。コロナがおさまるのが一番ですが、リモート葬儀も便利です」
コロナ禍で生み出されたリモート葬儀。一般家庭でもオンライン環境が整い、スマートフォンの普及率が高くなった今、新たな葬儀の形として認知されつつあります。会場の定員以上の人数も参列でき、高齢者にもぴったりのリモート葬儀。選択肢として定着する日も来るのかもしれません。