社葬などの参列者が多い大規模葬儀は、もちろんのこと家族葬などの小規模な葬儀でも、司会進行は非常に重要です。葬儀の司会は、葬儀社の担当の方や、プロの方が行うほかに親族が行う場合もあるのです。
この記事では葬儀の司会を依頼された時に注意すべき点や、葬儀を円滑に進行するコツなどをわかりやすく解説しています。
葬儀の司会は誰に頼んだらいいのでしょう?また司会をやるには何か資格が必要なのでしょうか?ここでは、葬儀の司会は誰がするものかについて解説します。
昔は、司会を生業にしているプロやフリーランスの方が、葬儀社から依頼されて、司会を引き受けることが多かったようですが、最近では、葬儀社のスタッフが司会役を引き受けるケースの方が多くなっています。
葬儀社では、葬儀の運営だけでなく、司会進行などの教育に力を入れているところが増えてきているので、通常の葬儀であれば、ほとんどの担当の方が司会を務めることができるようになっています。
実際、葬儀の基本プランに、司会が含まれているところも増えており、現在の葬儀では葬儀会社のスタッフに司会をお願いするケースが一番多いと思います。
喪主や、故人にごく近い遺族は、葬儀の際にあまり動かずに、参列者への応対に専念することがよしとされていますので、遺族の中から葬儀の司会をする人を選出することはまずありません。
しかし、家族葬のような小規模葬儀の場合、司会を含めた全ての役目を親族だけで行いたいと考える方もいらっしゃいます。そのような場合、親族の中で葬儀の司会経験がある方や、弔事に精通した方が司会をお願いされることもあります。
葬儀社のスタッフの方が司会を行うときでも、事前に親族と打ち合わせをして、故人の生前のエピソードや人柄などを交えたトークで司会進行を行いますが、葬儀までの準備期間は非常に短いので、故人の多くを知ることは現実的に不可能です。
親族の方が司会を担当したときは、様々な故人のエピソード頭に入っていたり、故人の人柄を理解できていることが多いため、司会に慣れている人であれば、スタッフの方よりも、参列者を主導し、思いのこもった葬儀の進行ができるというメリットがあります。
葬儀のナレーションを行うのに特別な資格は不要です。誰でも、葬儀のナレーションはできますが、やはり過去に司会やナレーションの経験があった方が、円滑に行うことができるでしょう。
とはいえ、全く司会やナレーションの経験がないのに、親族などから依頼を受けることがあるかもしれません。その場合は、葬儀のナレーションのポイントを確実に抑えておくことで、初めてでも対応できると思います。
故人を紹介するナレーションで抑えておくべきポイントを紹介します。
生前、故人がどのような人柄だったのか紹介します。「いつも明るく元気だった」「物静かで優しかった」など、故人のいいところ、長所をメインに紹介します。
故人の短所を入れて紹介する時は、
「仕事柄、頑固で厳しい一面はありましたが、それはいかに仕事に対して一途に取り組んでいたかの表れです。仕事を離れたときは、家族愛に溢れる優しい人でした」
など、併せて長所も紹介して、全体的にプラスのイメージが強くなるようにします。
故人が男性ならば、生涯を通して仕事をしていたことが多く、仕事に関するエピソードも挿入しやすいと思います。普通の会社員で、仕事の内容がよくわからなかった場合は、
「同僚の方や部下から頼られることも多く」
「ムードメイカーのような存在で、いつも職場の皆さんを笑わせてくれました」
などのように、職場での故人の姿をエピソードとして入れることもできます。
女性の場合、専業主婦で仕事をしていなかったという人も多いです。その場合は
「料理が得意で、毎日家族のために美味しい料理を作ってくれました」
「仕事が忙しい娘さんの代わりに、お孫さんの面倒もよく見て下さり、皆、おばあちゃんが大好きでした」
というように、家庭で夫や子供を陰ながら支えていたというエピソードにするのがいいでしょう。
故人が生前に力を入れていたことや、趣味にしていたこともエピソードに含めると、さらに故人の人となりがわかるナレーションになります。
「ゴルフが大好きで、定年前には、シニアプロを目指そうかななんていう冗談を言うほどの腕前でした」
「おばあちゃんと一緒に家庭菜園で、白菜、大根などを作るのが好きで、毎週、子供たちに新鮮な野菜を持ってきてくれました」
故人がご家族をどのように思われていたのか?また、家族にとって故人はどのような人だったのかというエピソードも、紹介ナレーションの重要な要素です。
「娘さんとお孫さんがお盆に帰省する時は、待ちきれずに、電車が到着する何時間も前から駅に向かうほどでした」
「息子さんが仕事で東京に行ってからは、どこに行くにも夫婦一緒で、まさにおしどり夫婦とはこの二人のような夫婦なんだろうなと思いました」
ナレーター本人と、故人との間に印象的な思い出があれば紹介します。故人との繋がりがそれほどない場合であれば、故人と家族や親族との思い出を伝聞形式で紹介します。
「病気がわかってから、家族で行った富士山旅行。初めて富士山の雄大な姿を見て、まるで子供のように無邪気にはしゃいでいた姿が忘れられないそうです」
葬儀式のシーンに合わせたナレーションの例文を紹介します
葬儀が開式することを伝え、参列者の方に葬儀場への入場を促します。
□□家葬儀参列の皆さまにご案内申し上げます。
間もなく開式の時刻となります。
受付がお済みの方より会場へのご入場をお願い申し上げます。
開式前は、ロビーで会話されている方も多く、一度では聞き取れない場合がありますので、アナウンスは繰り返して2度行います。
参列者が入場、着席したことを確認し、僧侶入場のアナウンスを行います。
「導師が入場されますので、皆さま合掌にてお迎えお願いします」
僧侶が入場し、読経の位置についたことを確認し、葬儀開式のアナウンスを行います
本日はお忙しいところお運びいただきありがとうございます。
只今より、故□□□□様の葬儀ならびに告別式を執り行います。
僧侶の読経が終了した後に、弔事を頂きますので、弔事を述べる方を紹介するアナウンスを行います。
ただいまより、弔事を頂きます。
友人を代表して□□様、よろしくお願いいたします。
頂いた弔電を読み上げます、時間の関係で全ての弔電を披露することができない場合は、その旨についても伝えます。
「ここで、本日頂戴しております弔電のご披露を申し上げます。本日は、大変多数の弔電を頂いておりますが、時間の都合にて、大変失礼ながら、本文・敬称を省略し順不同にてお名前のみ読み上げさせていただきます。」
喪主や親族代表が挨拶をした後、葬儀は終了しますので、閉式の挨拶を行います。
「以上をもちまして、故□□□□様の葬儀、並びに告別式を終了いたします。本日はお忙しいところ、ご臨席いただきまして誠にありがとうございました。お帰りの際にはお引き物のお引き換え忘れの無いよう、ご案内申し上げます。」
次に葬儀のナレーションを行う時の注意点を紹介します。
葬儀の司会は進行役としてだけではなく、葬儀の顔とも呼べる存在となるので、失礼があった場合、葬儀自体の印象が悪くなり、喪主や遺族に恥をかかせることにもなりかねません。そのため、ナレーション時の言葉使いには、細心の注意を払う必要があります。
また、弔事では、不幸を連想させる「忌み言葉」を使うのはNGです。ナレーションの原稿を確認し、忌み言葉が入っていないか事前に確認しておいてください。
弔電の紹介や、弔辞の紹介などで、名前を読み上げるときに、相手の名前を間違うことは大変失礼に当たります。名前は、通常の読み方と違う場合があるので、事前に相手の名前を確認し、フリガナを振っておくことが大事です。
また、難しい漢字などは、普段は何事もなく読めるものであっても、ナレーションの緊張感から、読み方を失念してしまう恐れもありますので、読みにくい漢字などもフリガナを事前に振っておくことをおすすめします。
葬儀は亡くなられてから間もなく行われます。そのため大切な方の死という大きな悲しみから立ち直れていない人がほとんどです。ナレーションを行うときは、遺族の悲しみを念頭において、厳かな雰囲気で行う必要があります。
家族葬などの小規模葬儀で、故人が大往生したという場合は、同じ葬儀でもアットホームな雰囲気で行うことがあります。その時も、厳かな雰囲気を保つことは必要ではありますが、あまりにも畏まったナレーションは、その場の雰囲気から浮いてしまう恐れがありますので、会場の雰囲気にあったナレーションを心掛けるようにしてください。
葬儀のアナウンスをお願いされてから、葬儀までの時間は非常に短いため、十分な準備や練習はできないでしょう。何度も司会の経験があるならば、今までの経験を活かして、台本に頼らなくてもアナウンスができるかもしれませんが、あまり経験がない方は台本を全て暗記することは難しいので、進行は台本を見ながら行うという形になるでしょう。
間違えるよりも、台本を見て確実にアナウンスを行うことは問題ありませんが、ずっと台本を読みながらのアナウンスは、あまり見栄えのいいものだとは言えません。
基本的に、アナウンスする時は、参列者や遺族の方を向いて行うことを意識して、台本を見るのはある程度、間隔をあけることで、断然、見栄えもよくなります。