祭壇の中央で静かに微笑む故人の姿。葬儀会場では故人の生前の姿を思い出させてくれる遺影写真を見る機会もあります。しかし、どのような写真を遺影として選ぶべきなのか? 葬儀の後、どうやって処分すればいいか? など意外と知らないことがあるのです。
この記事では遺影写真への疑問や、注意点などをわかりやすく解説していきます。
遺影に適しているのはどのようなものでしょうか?ここでは、遺影写真の選び方をご紹介します。
基本的に、遺影に使う写真は故人最後までが生きた証となるので、できる限り最近撮影したものを選びます。但し、長期入院などで撮影できなかったり、病気で表情が窶れているならば、入院する前の元気だった姿を撮影したものや、若い頃の姿のものを使うのもいいです。
素晴らしい笑顔の表情であっても、ピントがボケていれば使えません。祭壇に飾るときには、大きく引き伸ばして遺影写真にするので、元の画像が小さい場合、引き伸ばしてみるとピントがボケていたり、画像が粗くなることがあるので、注意してください。
故人が生前に葬儀を準備して、自分の使って欲しい写真を用意していたならば、故人が気に入っているものを使えますが、通常、どれを選ぶかは遺族の判断になります。
葬儀が終わった後にも、法要の時に祭壇に飾ったり、コンパクトな大きさのものを仏壇付近に置いたりするので、毎日、目にする遺族が気に入ったものを遺影にするのがおすすめです。
実家に飾られた先祖の写真を見ると、どこか畏まった感じのものが多くはないでしょうか? 以前は、正面を向いた、固い表情で写っている姿のものがよく使われていました。
昔の遺影写真は、故人の威厳というものを一番に考えていたのかもしれませんが、現在では、威厳よりも、生前の故人がどんな人だったか、人柄がわかる写真を選ぶ方が増えています。
普段の何気ない表情や、自然で飾り気のない笑顔を写した瞬間の写真は、生前の人柄がわかる素敵な一枚になると思います。
写真を選ぶ際に寄せられる、よくある質問を紹介します。
社葬のような大規模な葬儀で、大きい祭壇を使うときは、祭壇に合わせて大きなサイズの写真を使いますが、一般的な葬儀の場合、特に遺影写真のサイズに指定はありません。
よく使われているサイズは、4つ切りサイズ(25.4×30.5㎝)、A4サイズ(21.0×29.7㎝)です。遺影に使われた後は、写真立てに収まるようにL版サイズ(8.9×12.7㎝)にして仏壇の近くや床の間に置くケースが多いです。
昔から正式な服装は和服という考えが多く、現在でも、そのように考えている方もいらっしゃるので、葬儀社では服装の着せ替えサービスを行っており、どんな洋服でも和服に着せ替えて遺影を作成してくれます。
現在では服装に拘る人は少なくなり、故人の自然な表情と同様に、いつも着ていた服や、故人がお気に入りの服を着た写真というのも、生前の生き生きとした姿を思い出させてくれるものと考える人が多くなり、和服に拘る人もかなり少なくなりました。
背景に余計なものが映っていてゴチャゴチャしている場合や、他の人が後ろに写り込んでいる場合もありますが、最近の画像加工技術は優れているので、完全に修正することが可能です。そのため、背景については気にしなくてもいいです。
1人で撮影したものよりも、友人や知人と一緒に写ったスナップの方が、自然な表情で普段の故人の姿を偲べるものがあるかもしれません。スナップ写真を利用することは可能ですが、気を付けなければならないのは、多数の人と一緒に写っていて故人の姿が小さい場合です。
一緒に写真に写っている方や背景などは、加工技術で消すことができますが、故人の姿が小さいと、大きなプリントにしたときに、画像が粗くなる可能性があります。
生前整理を行う人は、自分のためと言うよりも残された遺族の手を煩わせたくないという思いで行う人が多いと思います。
葬儀の際に、どれを遺影に使うかというのは遺族が頭を悩ませる場合があるので、生前に使って欲しい写真をエンディングノートに残して置いたり、生前予約などをした葬儀社を通じて、プロに遺影用の撮影をお願いする方も多いです。
次に、遺影写真の飾り方や処分方法について説明します。
葬儀では、祭壇に写真が飾られていることがほとんどですが、実際、葬儀の儀式で必要なものは、祭壇に置かれているご本尊と、位牌であって、遺影写真は必ずしも必要なものではありません。
通夜や葬儀では、故人が棺に安置されているので、窓を開けて参列者が故人の顔と対面できます。しかし、参列者が多いと、全ての人が故人の最後のお別れができないという理由で、故人の姿が映った写真が必要になるのです。
また、事故などで遺体の損傷が激しく故人の遺体と対面できない場合や、地方によっては、通夜の時点で、先に火葬が終わっているところもありますので、そのような時には、遺影写真を用意する必要があります。逆に考えたら、参列者が少ない家族葬などでは、特に用意する必要はないと言えるでしょう。
亡くなられた日から故人の魂は、この世とあの世を彷徨い、7日ごとに生前行ったことに対しての審判がされると言われています。遺族が手を合わせて冥福を祈ることで、罪が軽くなったり、楽になったりすると言われているため、四十九日の忌明け法要まで後飾り祭壇を設置します。
葬儀に参列できなかった人が弔問に訪れるのも、四十九日の法要前が多いので、弔問客がくることも考えて後飾り祭壇に遺影を飾っておく場合が多いです。
四十九日法要が終わった後、家に飾る予定がなければ処分をします。特に宗教的な意味合いがないものなので、指定されたごみ収集日に出しても全く問題はありませんが、心情的にゴミとしては出せないという方がほとんどです。
その場合は、四十九日法要を行ってもらった寺院にお願いしてお焚き上げの法要をしてもらいます。後飾り祭壇に置かれていた白木の位牌も、魂抜きをした後になりますから、一緒にお焚き上げで処分を行います。
家のどこに飾ればいいのか? 飾り場所の注意点について説明します。
毎日、顔を見ながら仏壇に手を合わせることができるので、仏壇の近くに飾る方も多いです。仏壇の中にL版サイズのものを飾っている方もいますが、仏壇の中には本尊様があるため、写真を置くことによって本尊が遮られないようにするよう、置く位置に工夫が必要になります。
仏間や床の間に、仏壇が置かれている家が多く、仏間の壁の上部に飾ることも多いです。元々、先祖代々の写真が飾られている場合は、右側が上座になるため、右から左に順番に写真を配列します。
仏壇の中には仏様のご本尊と、魂が入っている位牌が置かれています。遺影を仏壇の上に置いてしまうと、まるで仏様を見下ろしているような形になってしまいます。
亡くなられた故人は、仏様の弟子となるので、上から見下ろしている形になるのは避けたほうがいいです。
最近は仏間や床の間などがない家も増えてきました。洋室などでも自然に飾る方法を紹介します。
和室があるならば、仏壇の置き場にも困りませんが、昔ながらの仏壇は、フローリングの洋室などには、全くマッチせず、置いたら違和感が出てしまいます。
仏壇で大事なのは外観ではなく、中に置かれているご本尊や位牌なので、実際、どのような形でも問題ありません。そのため、最近では、外観からは全く仏壇に見えないおしゃれな物が多数販売されるようになってきました。素材や色なども従来の仏壇とは全く違うものになるので、購入を考えている人は検討してみてください。
仏間や床の間などはある程度の広さがある和室なので、仏壇を置いても部屋に圧迫感はありませんが、最近の洋室などはそこまで部屋が広くないので、大きな仏壇を置くと、部屋に対しての圧迫感はかなりのものです。
最近では、従来の観音開きタイプの仏壇の形と違い、タンスやテーブルの上に置ける、手軽なミニ仏壇も人気があります。扉がついていないタイプなどもあり、一見、仏壇には見えないおしゃれなものも数多く販売されているので、アパートやマンション住まいで、部屋のインテリアに仏壇が合わないのならば、ネットショップなどで探してみて下さい。
デジタルフォトフレームなどに、写真を収めてスライドショーとして流すという方法もあります。写真立てに入れた場合は1枚だけになりますが、スライドとして流せば、様々な表情の故人の姿を映すことができるという利点もあります。