納棺は故人が旅立つための身支度を整えて、棺に納める儀式です。ご遺族の方にとって、故人とのお別れの重要な儀式となりますので、葬儀スタッフに任せるだけでなく、遺族も一緒に作業を行うことが多いです。
この記事では、あまり知られていない「納棺」という儀式について詳しく説明します。
遺体を棺に納めることを「納棺」または「入棺(にっかん)」と呼びます。
一般的には、棺に納める前に、故人があの世へ旅立つ準備を行うために、遺体を清めたり、死化粧を行ったりして、身支度を整える作業を含めた全てを納棺と呼ぶことが多いです。
葬儀における儀式の多くは、葬儀スタッフが行ってくれますが、納棺の儀は、遺族が参加できる儀式の一つです。
故人のご遺体との最後の別れは告別式ですが、生前の衣装とは違う死装束へ着替えさせ、遺体を洗い清める儀式を行うことで、遺族にとっても故人の死と向き合い、別れを実感できる最初の重要な儀式になります。
実際に遺体を洗い清めたり、死化粧を行うのは、納棺師や葬儀スタッフになりますが、納棺師や葬儀スタッフの指導のもと、遺族も死化粧などの手伝いをすることができます。
力のない高齢者や女性にとって、ご遺体を棺に納める作業は大変ですが、基本的にはスタッフがご遺体を運ぶ際に手を添えるような形での参加になるので心配はいりません。
故人のご遺体と一緒に棺に納めるものを「副葬品」と言います。副葬品は、故人の愛用していたものや、思い出の写真などが一般的ですが、足を怪我していた故人が死出の旅路で歩くのに支障がないようにと、杖などを入れる場合もあります。
故人のご遺体と一緒に副葬品は火葬されますので、副葬品には注意が必要です。燃焼時に爆発する恐れがあるもの(スプレー缶など)、水分が多いため火葬の妨げとなってしまうもの(生物や大きなぬいぐるみ)などは、持参されても、棺に入れることを断られる場合があります。
納棺の儀はどのようにすすめられるのか、儀式の流れについて説明します。
末期の水は、故人がのどの渇きで苦しむことのないように、親しい人が順番に遺体の口元に水を含ませた脱脂綿をあてたり、新しい筆を水に浸して口元にあてて、故人の喉を潤すための儀式になります。
末期の水と言う儀式を行うようになったのは、お釈迦様が入滅される際に「喉が渇いたから水を持ってきてほしい」と頼まれたことが由来となっていると言われています。
宗派の中でも、浄土真宗ではあの世で苦しむという教えはないため、末期の水の儀式は行いません。
湯灌はたらいやバスタブに水をはり、遺体を清める儀式です。遺体を洗って清めるだけでなく、生前の穢れや、生に対する故人の煩悩も同時に洗い流す儀式です。最近では、湯灌自体を省くケースも増えて来ており、その場合は、お湯に浸した布で遺体を拭いて清めます。
遺体の髪の毛を整え、男性の場合は髭を剃り、女性の場合は口紅などの薄化粧が施されます。
地域や業者によっては、顔の化粧だけではなく、爪も切りそろえてくれるところがあったり、死者に刃物を向けることを嫌う場合もありますので、死化粧はその土地の風習に合わせて行います。
故人があの世で着用する服を着せて旅に立つ準備をします。一般的には「経帷子(きょうかたびら)」を着用することが多いですが、神式では「白の小袖」を着用させるように宗派によって死装束は異なります。
死装束を着せる以外にも、「手甲」を手の甲につけたり「脚絆」を履かせたり、三途の川を渡るときの船賃とされる六文銭を入れた頭陀袋を首から下げます。
浄土真宗では、亡くなられた方はすぐに仏様になると考えられていますので、死装束を着せるという考え方はありません。
死装束を着せたら、故人の遺体を棺に納めます。遺体を持ちあげて納棺するのは、出席している方全てで行いますが、力のいる作業になりますので、葬儀スタッフが数人で遺体を持ちあげるときに、遺体に手を添えるという形で参加する形になります。
遺体を棺に納める際に、生前、故人が愛用していたものなどを一緒に納めます。副葬品は、遺族がそれぞれ持ち寄って棺に納めますが、棺はそのまま火葬されるものになるので、火葬した時に破裂したり爆発する恐れのあるものや、遺体の燃焼の妨げとなるようなものは断られる場合があります。
副葬品としていれることができないものとしては、ビニールなどの有害物質を発するもの、大きな果物、辞書、金属、ガラス、爆発物などがあります。