「一日葬」は近年広まりつつある、新しい葬儀の形式です。一度は名前を聞いたことがある、という方も増えてきているのではないでしょうか?
通常の葬儀では、お通夜と告別式の2日間に渡って葬儀を行うのに対して、告別式のみを行うのが一日葬です。一日葬には、遺族の心身の負担や金銭的負担を減らすことができるなどのメリットがあります。
この記事では、「一日葬とは?」「一日葬を執り行う際の流れ」「気になる疑問」などについて解説します。一日葬について知りたい、自分たちに合った葬儀形式なのかを考えたいという方の、疑問や悩みを解決していきます。
一日葬とは、通夜を行わない形式のご葬儀です。
地域差はありますが、通常仏式の葬儀では、2日間に渡って葬儀を行います。1日目が通夜、2日目が告別式です。しかし一日葬の場合は、通夜を行わずに告別式のみを実施します。
一日葬が広まった理由には、時代の変化が大きく影響しています。主な理由は、
などです。
中には告別式を行わない「直葬」を希望していたけれど、「一日葬」を選択したという人もいらっしゃいます。直葬は葬儀自体を行わず、火葬のみを行う形式です。僧侶も呼ばないため、金銭的負担を減らせるというメリットがあります。けれど、あとから「やはりちゃんと葬儀をした方がよかったのでは?」と後悔するケースがあることも事実です。
なので、「金銭的負担を抑えつつ、しっかりと葬儀を行いたい」という人に、一日葬はぴったりの形式となっています。
ここからは一日葬全体の流れのうち、葬儀前日までの流れを紹介します。
故人がお亡くなりになり、病院もしくは自宅から移動が終わったら、日程の打ち合わせを始めます。
日本の法律では死後24時間経過すると、火葬許可証が発行されて火葬ができるようになります。そのため、最短で亡くなった翌々日に葬儀を行えます。
このポイントを踏まえたうえで、実際に日程を決める際には、
の3つを確認していかなければいけません。
まずだいたいの葬儀の希望日を決めたら、火葬場に空きがあるかを確認。空きがない場合は、空いてる日に変更するもしくは市外の火葬場にするなどの対応をします。
次に僧侶の予定確認です。菩提寺がある場合は菩提寺の僧侶に予定を確認、菩提寺がない場合は宗派を確認すると葬儀社から僧侶を紹介してもらえるケースが近年増えています。
3つめに親族の予定を確認しましょう。遠方から来てほしい親族がいる場合や身体が不自由な親族が要る場合は、前もって予定を確認することが大切です。
勝手に葬儀の日程を決めてしまうと、あとからトラブルになるケースもあるので注意してください。
葬儀の前に「納棺」を行います。納棺とは、故人の身支度を整えて、棺に納める儀式です。死装束を着せて、旅立ちの準備を整えます。
納棺の儀式は基本的に葬儀社のスタッフが、しきたりに従った流れで進めてくれます。もちろん、遺族・親族の同席も可能です。故人とのお別れをしっかりと行うために、なるべく参加することをおすすめします。
納棺の儀式は、
という流れで進めていきます。
まず末期の水とは、故人の口元を脱脂綿など水で潤す納棺の儀式のひとつです。故人が喉が渇いて苦しまないようにという意味合いで行います。地域や宗派によっては、末期の水を行いません。
次に、故人を水で清める儀式「湯灌」です。旅立つ前に身体をきれいにして、生前の穢れや煩悩を落とす意味合いが込められています。
湯灌が完了したら、死化粧と死装束の着用です。女性にはメイクを施し、男性はひげを剃り、お顔を整えていきます。お顔と身体を整えたら、死装束を着用させてあげましょう。
そして最後に、故人と一緒に埋葬する副葬品を納めます。故人の愛用していたものなどを納めることが可能です。
副葬品を納める際は、ひとつ注意事項があります。火葬場や自治体の決まりで、遺骨の損傷の原因になるものや公害の原因となるものは、副葬品として納めることができません。
副葬品として、納められない物の一例は下記の通りです。
自分たちで判断がつかない場合は、事前に葬儀社のスタッフに確認をしましょう。
次に、一日葬当日の流れを順番に沿ってお伝えしていきます。
遺族の場合、当日は開式の1時間前には式場に着くようにしましょう。参列者が来る前に、当日の流れや弔電、返礼品などの確認を行います。
参列者の場合は、余裕を持って開式の30分ほど前には到着して受付をします。式場に向かう時間や挨拶などの時間を加味して、余裕を持って行動を。
また式の始まる15分前には着席しておくようにしてください。
僧侶が入場し、司会者が開式の言葉を述べ、式が始まります。僧侶が入場する際は、合掌でお迎えしましょう。
僧侶が読経を読む時間は、20~40分と宗派によって差があります。
読経の中で「引導(いんどう)」と呼ばれる、故人を送り出す儀式を行います。故人が今世から旅立つ場面にあたるので、しっかり送り出してあげましょう。
司会者より焼香の案内が入り次第、順番に焼香を行います。
基本的には喪主、親族、参列者の順番です。案内にしたがって、自分の番が来たら故人の事を思いながら焼香をあげてください。
お棺に別れ花を納め、故人と最後のお別れを行います。
お別れの儀が終わると、棺のふたを閉めてしまうので直接故人のお顔を見られなくなります。後悔がないようお別れをしてください。
お別れの儀が終わり次第、棺を霊柩車に運び火葬場へ移動します。斎場で告別式を行った場合、遺族や参列者はマイクロバスや自家用車で移動することが多いです。
移動後は、火葬場にて火葬とお骨上げを行います。
火葬はおよそ1時間ほどかかるので、終わるまでは控室で待機。その後、遺骨を骨壷に納めるお骨上げを行います。
火葬後は「精進落とし」と呼ばれるお食事をいただきます。火葬場の控室もしくは斎場に戻り頂く場合が多いです。
精進落としが終わると、一日葬当日の式は全て終了となります。
一日葬当日以降に行う、法要について解説します。
仏教では命日を含めた7日後に、故人が三途の川に辿り着き、極楽浄土もしくは地獄へ行くかの審判が始まると言われています。故人が極楽浄土へ行けるよう、生前の罪を軽くするために行う法要が「初七日法要」です。
従来は初七日当日に法要を行っていましたが、近年では「繰り上げ法要」という形で、告別式の際に一緒に法要を行う場合が多いです。遺族や僧侶の予定調整が大変なため、繰り上げ法要を選ぶ人が増えました。
初七日法要の際に三途の川に辿り着いたあと、7回に渡る審判を追えて来世の行先が決まる日が四十九日です。故人が「良い審判が下りますように」と祈る日が「四十九日法要」です。命日から48日目の日にあたります。
遺族にとって大切な日にあたるため、四十九日法要はしっかり僧侶に読経してもらうことが多いです。そのため四十九日法要を行う際は、希望日の1カ月前までには予定調整をしておくことをおすすめします。
葬儀の打ち合わせ時と同様、
の確認は必須です。
納骨を行う時期に、明確な決まりはありません。ですが、遺族・親族が集まる「四十九日」「百箇日」「一回忌」「三回忌」などに行うケースが多いです。お墓に納める場合は、お墓があるかないかなどによって時期が左右されます。
明確な時期の決まりはありませんが、なるべく多くの遺族・親族が集まる三回忌までに納骨を終えるよう、進める場合が多いです。
ここでは、一日葬に関する気になる疑問にお答えしていきます。
僧侶を呼ばず、自分たちの好きな形式で行う「無宗教葬」でも一日葬はできます。
無宗教葬の場合、
といったメリットがあります。
ただ、菩提寺がある場合は勝手に無宗教葬を行うと、トラブルにつながるので注意しましょう。
無宗教葬の1日葬を希望する場合、
をしっかり明確にすることが大切です。
真言宗・曹洞宗においても、一日葬を行うことはできます。
真言宗は密教と呼ばれる、師匠から弟子へ教えが伝承され口外が禁じられている宗派。また曹洞宗の葬儀では、葬儀を行うことで故人がお釈迦様の弟子になるという考えを持つ宗派です。
そのため他の宗派と考え方や葬儀の形式が少し異なるため、1日葬は出来るの?という疑問を抱くかと思います。ですが、一日葬は行えるのでご安心を。
他の宗派と同様、一日葬を行う場合は、菩提寺や親族の了承を得た上で一日葬を行ってくださいね。
宗派や火葬の時間によって差異はありますが、平均5~7時間ほどが多いです。 仮に午前10時開式、火葬が午後12時頃からの場合は、下記のようなスケジュールで葬儀が進みます。
10:00 告別式
11:00 出棺~火葬場へ移動
12:00 火葬
13:00 お骨上げ
14:00 精進落とし
15:00~16:00 解散
あくまでも一例なので、参考としていただければ幸いです。葬儀前後に予定がある場合は、スタッフに予定時刻を確認しておきましょう。