仏壇は、一般的な家庭に置かれる礼拝施設。
皆さんの中にも自宅に仏壇があったり、自宅にはなくとも実家や祖父母の家を訪ねた時には仏壇に手を合わせた経験のある人がいらっしゃることでしょう。
そんな時、とりあえずお線香に火をつけて手を合わせただけ、という方も多いのではないでしょうか。
実は、仏壇へのお参りの仕方にもきっちりとマナーがあるのです。
自分の家でならまだしも、知人宅に招かれた時にマナーを守らずお参りをすると、ひょっとしたら快く思われないかも知れません。
そうならないためにも、マナーを学んでしっかりお参りしましょう。
この記事のポイント
お参りの手順
仏壇の参拝には手順があります。ご先祖様のためにも正しい手順を覚えておきましょう。
ここでは「一般的な仏壇のお参り」と「日々の仏壇のお参り」の手順について解説します。
一般的な仏壇のお参りの手順
一般的な仏壇のお参りの手順は上のようになっています。
注意点として、友人宅を訪問してお供え物をする場合にはご家族の方に声を掛けてからにしましょう。
日々の仏壇のお参りのことを「おつとめ」と呼びます。
おつとめは、朝と夕方に1回ずつ、1日2回行うのが望ましいとされています。
宗派により、手順や作法が異なりますが、ここでは基本的な手順についてご紹介します。
おつとめの手順
おつとめの手順は上のようになっています。
仏飯は昼前までには下げてしまいましょう。
また、毎日ご飯を炊かない、普段はパンしか食べないという方は無理に毎日お供えする必要はありませんし、パンを供えても問題ありません。
友人宅で気をつけるマナー
ご先祖様を参拝する以外にも、友人・知人宅を訪問して参拝させてもらう機会もあるでしょう。
他人の家の仏壇を参拝させて頂く際にもマナーがあります。
上記のようなことに気をつけましょう。
宗派は家系によって異なります。
「南無妙法蓮華経」を唱える方は多いですが、日蓮宗などの異なる宗派の方の仏壇前で唱えると笑われてしまうこともあるため、注意が必要です。
唱える前は、宗派について確認しましょう。
ご本尊が読みやすい方向で供える方が多いですが、この向きは間違いです。
参拝者が読める向きでお供えします。
お供えしたものは、そのまま私達に向けられているのは仏様からのご慈悲です。
お花が私達側に向いているのと同じ理由です。
りんを鳴らすのは、お経が始まるときと終わるときです。
友人・知人宅を訪問してお経を唱えない場合は、手を合わせるだけで大丈夫です。
後に詳しく解説致しますが、線香の焚き方は宗派によって異なります。
そのため、友人・知人宅の仏壇前で合掌させてもらう際は宗派について確認しましょう。
数珠入れはお念珠をもち運ぶための袋ものとしてだけでなく、お念珠を机や畳の上に置く際に下に敷くためのものでもあります。
正しい方法で利用するようにしましょう。
お参りの際の香典マナー
友人や知人宅を訪問する際に、葬儀に参列できなかったなどの理由で香典を持参するという場合もあります。
その場合のマナーについて解説致します。
香典の書き方に関しては基本的に普通に香典を書く際と同じで構いません。
宗派によって変わることがありますが、表書きとして水引の上、香典袋の中央上には「御香典」と書くのが一般的です。
よく使われる書き方に「御霊前」がありますが、これは浄土真宗では使ってはいけない表書きになります。
浄土真宗では故人は「仏になる」との考えられており、「霊」という文字は相応しくありません。
一方として多くの仏教では49日まで「御霊前」・49日のあとは「御仏前(御佛前)」と書きます。
水引の下、香典袋の表面中央にはフルネームを書きましょう。
中袋の表面には、包んだ金額を記載します。
各場所は袋の真ん中であり、「金○万円」「金○万円也」とのように書きます。
中袋の裏側には、郵便番号・住所・名前を記載します。
こちらは中心から左に書いていきます。
香典を渡すタイミングとしては仏壇にお供え物を供える時と同時に仏壇に供えましょう。
また、香典はお供え物の上にのせて供えます。
りんの鳴らし方の作法
仏壇で合掌する際に「チーン」と音を鳴らす仏具のことを「りん」と言います。
りんは、禅宗で使用される仏具として誕生しましたが、現在では宗派に関係なく利用されるようになりました。
基本的には「りん台」に「りん布団」を敷き、その上に「りん」「りん棒」を設置して利用します。
りん棒を弾ませるようにして、りんのフチを叩くと澄み切った良い音が出ます。
なぜ、りんを鳴らすのかご存知の方はいますか?
りんには「澄んだ音を聞いて、人々の邪念を祓う」「りんの音に乗せて供養や祈りを届ける」「読経の始まりや終わりの区切りとして鳴らす」という3つの役割があるのです。
お経の前後で鳴らすりんですが、りんを鳴らす場合は打ち方に注意しなければ、仏具のりん棒が損傷してしまいます。
正しいりんの鳴らし方として、りんの横側を打つようにしましょう。
横側をやさしく打つことで、りん棒も損傷する心配がなくなります。
お椀の角を使用して、りんを鳴らす人はいますが、このような方法だとりん棒の損傷の原因となるので注意が必要です。
りんもものによっては薄いものもあり、凹み、歪みの原因になったりもします。
このように、良くないりんの鳴らし方をすると、仏具が損傷して買い替えをしなければいけなくなってしまいます。
長く利用するためにも、仏壇・仏具は正しい方法で利用して大切に取り扱いましょう。
宗派による線香のあげ方
先程、宗派によって線香の本数が変わると説明しました。
ここでは、宗派による線香の本数の違いを詳しく解説します。
宗派に応じた本数を守るようにしましょう。
臨済宗、曹洞宗、日蓮宗の線香の本数は1本です。
線香に火をつけたら、香炉の真ん中に線香を立てます。
昔は修行や瞑想をするときに、線香が燃え尽きる時間を図っていたからであると言われています。
天台宗、真言宗の線香の本数は3本で、香炉の中で逆三角形になるように立てます。
自分側に1本の線香を立てて、仏壇側に残り2本の線香を立てます。
浄土宗の線香の本数は、1本もしくは2本で、火が付いたら香炉の真ん中に立てます。
2本の線香を立てる場合は、まとめて立てるのではなくて1本ずつ立てるようにしましょう。
浄土真宗では線香の本数は1本ですが、1本の線香を半分に折って利用します。
2本の線香に火がついたら、香炉に左側に火が付いている状態で寝かせます。
浄土真宗は「常香盤」と呼ばれるものを線香の代わりに利用されていて、その当時の名残で線香も寝かせるようにして利用されるようになりました。
お供え物の種類
まず、知っておきたいことは、お供え物は「御供」と呼ばれるさまざまなお供え物があるということです。
「御供」には5種類(香・花・灯燭・浄水・飲食)あり、どれも毎日欠かすことができない大切なものとなります。
それぞれ、役割やお供えをするタイミングが異なるため、大切なご先祖様のためにも、御供について理解を深めましょう。
「香」とは、お香や線香のことです。
香炉もしくはお線香立てを使用して供えます。
役割:香には、香りや煙で心身を浄化させるという役割を持っています。
お供えするタイミング:朝のお供えの一番最後にお供えをします。
下げるタイミング:下げる必要はないため、そのままにしておきます。
「花」とは、生花や造花のことです。
花立てを使用して供えます。
役割:参拝者の心を清らかにする役割とご先祖様に楽しんでもらう役割があります。
お供えするタイミング:朝のお供えの際に、花立ての水を差し替えます。
下げるタイミング:お花を差し替えるときが下げるタイミングです。
「灯燭」とは、ロウソクのことです。
ロウソク立てを使用して供えます。
役割:供養をして、私たちの心の迷いをなくす役割があります。
お供えするタイミング:仏飯の後にロウソクに火を灯します。
下げるタイミング:おつとめが終了をした際に火を消します。
「浄水」とは、水やお茶のことです。
茶湯器を使用して供えます。
役割:心を洗う役割があります。
お供えするタイミング:仏壇に向かう時に差し替えます。
下げるタイミング:浄水を入れ替える時に差し替えます。
「飲食」とは、一膳目のご飯のことです。
仏飯器を使用して供えます。
役割:参拝者の方と同じ食べ物を頂くことで、仏教やご先祖様との繋がりを保つ役割を持ちます。
お供えするタイミング:朝ごはんや夕ごはんを食べる前に供えます。
下げるタイミング:ご飯が固くなる前に下げましょう。
御供について説明しましたが、「飲食」はご飯だけではなくて、故人が生前好きだった果物やお菓子もお供えに向いています。
基本的に、仏壇に供える物は傷みにくいものが向いているのです。
また、お供えしたお菓子は必ず食べましょう。
仏壇には上段・中段・下段がありますが、中段に飲食のお供え物をするのが一般的です。
箱菓子のサイズが大きくて、供えることができない場合は、中身を取り出してお供えしましょう。
お供えにおすすめの食べ物 和菓子:半生菓子、水菓子、りんご、みかん
お供えに向いていない食べ物 綿菓子:飴、匂いがきつい食べ物
お盆やお彼岸のお参り
お盆やお彼岸は、ご先祖様の霊が年に一度訪れると言われている、日本の中でも大切な年中行事です。
ご先祖様に関屋をして、敬いつつ、おもてなしをして供養を行います。
おもてなしの方法の1つとして、仏壇飾りがあり、気持ちを表現するのに最適です。
そのため、ここでは、お盆やお彼岸の仏壇の参拝方法について解説します。
仏壇飾りで用意するもの
お盆の仏壇飾りでは上記のようなものを用意します。
お供え物はご先祖様が生前好きだったものを供えましょう。
飲食であれば、お酒やお菓子、果物が最適です。
食べ物をお供えする場合は、そのままの状態で食べられるように袋などから取り出して、お皿に乗せて供えましょう。
仏壇の前に設置する棚に敷くゴザのことを言います。
お釈迦様は昔、まこもの敷物で病人を治療したという話があり、この話がきっかけとなってまこもの敷物が使用されるようになりました。
ご先祖様が、浄土と地上の生き返り、浄土と地上の行き帰りに使用する乗り物のことを言います。
きゅうりを旨、茄子を牛に見立てて作成します。
なぜ、2種類あるかというと、地上に戻ってくるときには馬で早く戻ってきて、浄土に戻るときはゆっくり帰るという意味があるからです。
ご先祖様の霊を向かい入れる13日には内側、見送る16日には外側に向けて置くようにします。
ご先祖様が戻ってための目印になる盆提灯を灯します。
門口や仏壇目に提灯を灯します。
その家の目印になるものなので、絵柄の入った提灯や家紋の入った提灯を用意します。
茄子やきゅうりを刻み、閼伽水(あかみず)と洗った米を混ぜ、水を張った蓮の葉の上に盛ったものを言います。
水の子は、ご先祖様の喉を潤す役割を持っているのです。
また、ご先祖様に仏飯やお供え物が行き渡るようにという意味合いもあります。
お盆やお彼岸の際には、毎日、新しいものを作ってお供えをします。
水の子を作る際に使用する水のことを言います。
浄土から地上に戻ってくる際に、悪霊を追い払うと意味があります。
仏教上では、蓮の花は極楽浄土を象徴する花とされています。
また、蓮の花は7月から8月にかけて開花するため、娯楽浄土を象徴する花として蓮の花が挙げられたという説もあります。
仏壇飾りに必要な仏壇から取り出した位牌などの仏具や食べ物、植物などのお供え置くための棚です。
盆棚とも言われ、一般的には仏壇の前に起きます。
棚の上にはこも・まこもを敷いて飾ります。
仏壇飾りは、配置の仕方などが決められています。
地域や宗派によって異なるため、線香の本数や立て方や焼香の手順の流れは個別に確認してみてください。
ここでは、一般的な仏壇飾りの方法をご紹介します。
仏壇飾りの手順
上記の仏壇飾りは13日の朝に用意するのが一般的とされていますが、お盆やお彼岸で親戚などが沢山来る場合は、早めに用意しておきましょう。
ついやってしまうマナー違反
日々のおつとめで当たり前にやっていることが、実はマナー違反に該当することは良くある話です。
そのため、自分の参拝方法が正しいのか確認してみましょう。
特に上記のような点は、多くの人がマナー違反と知らずにやってしまっているかもしれません。
ご先祖様も喉が渇いているだろうと心配をして、コップで水をお供えする人もいますが、この行為は間違いでマナー違反に該当してしまいます。
お水は青木を差して華瓶でお供えするのが正式な方法です。
花瓶のスペースが用意できないなら、省いても問題ありません。
ご先祖様のために何かをしてあげたいという気持ちは尊いものですが、仏飯は所定の位置であるご本尊の前にお供えしましょう。
遺影や位牌の前にも仏飯をお供えする行為はマナー違反に該当するため気をつけましょう。
便利なので、経机の上にお鈴やロウソク立てを設置する方はいますがマナー違反に該当します。
経机は僧侶の方がお経を読むための場所となります。
そのため、日常的に利用する仏具を置くことは好ましくありません。
数珠なしでお参りする行為は、ご先祖様の心を手掴みするようなものと言われています。
そのため、日常的に数珠を使用するようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。
今回は仏壇への正しいお参りの仕方についてお話をしました。
現代では生活環境が変わってきたとはいえ、仏壇に手を合わせたことのある人はいるでしょう。
しかし知らず知らずとはいえマナー違反をしているとなると、特に自宅でない場合はあまり気分が良くないはずです。
正しいマナーを知って正しくお参りしましょう。