お墓参りに行くと、いろいろなお墓を目にしますが、『□□家之墓』や『□□家先祖代々之墓』と書いてあるものや『南無阿弥陀仏』などの念仏が刻んであるものは、建立する人が自由に選んで決めたものなのでしょうか?
お墓に刻まれる言葉や念仏にはどんな意味があるのか?自由に好きな言葉を使うのもマナーに反しないものなのか?
お墓に刻まれる”言葉”と”文字”についてわかりやすく解説します。
昔からの和墓では『□□家之墓』や『□□家先祖代々之墓』という誰の家のお墓かということを表す文字を刻むことが多かったのですが、最近増加している洋墓では、名前や法号ではなく、故人が好んだ言葉や、家訓などを刻んだ墓石も増えています。
よく見かけるのが『絆』『感謝』『夢』『希望』などですが、それぞれが墓で眠っている故人に対してのメッセージや、故人から子孫へのメッセージとなっています。
『夢』や『希望』などの言葉は、遺された遺族へ、そして、これから生まれてくる子孫に対してのメッセージとなり、どんな時代であっても夢や希望を捨てずに生きて欲しいという願いが込められています。
『感謝』の言葉は、亡くなられた故人に対して、いままでありがとうという気持ちを込めた遺族側のメッセージと、故人から遺族へ対してのメッセージの二通りの意味が存在します。
また、言葉だけでなく、故人が残した俳句や誌などを彫っている墓石も多くなってきました。
故人が座右の銘とした言葉を入れたり、生前に書いていた俳句などを墓石に記すことで、故人の人となりを知ることができます。墓は子々孫々に引き継がれていくものなので、現在は亡くなった方のことを覚えている人が多いですが、時が経つうちに故人のことを知らない子孫が増えてきます。
時が経っても、お墓に刻まれた言葉によって、故人の人となりなどを知ることができるのは大きなメリットです。
また、子供が女子だけの家の場合、結婚によって姓が変わってしまう可能性があり、和墓のように『□□家之墓』だと、違和感を感じてしまうこともありますが、好んでいた言葉をお墓に刻むことで、その心配もなくなります。
『絆』や『感謝』『ありがとう』などの文字ならば問題はありませんが、あまりにも個性が強く出てる言葉を選んでしまうと、世の中が変わったときに、違和感を感じてしまう可能性があります。
言葉を入れるときは、奇をてらったものではなく、いつの時代でも通じるような意味のものを彫るのが無難です。
また、寺院によっては、必ず墓石に戒名を入れなければならないといったルールを設けているところもあるので、最初に確認しておくのがいいでしょう。
『□□家之墓』『南無阿弥陀仏』など、お墓に書かれている文字は様々です。
仏教には様々な宗派があり、宗派によって刻んでいる文字が違います。ここでは各宗派の特徴について説明します。
亡くなられた方はすぐに極楽浄土に行くという教えのため、他の墓のように『□□家之墓』を刻まずに、お墓の正面には『南無阿弥陀仏(ナムアミダブツ)』の念仏を刻むのが一般的な浄土真宗のお墓です。
また、先祖や故人に対して、極楽浄土でもう一度会いましょうという意味の『倶会一処(クエイッショ)』を入れることも多いです。
戒名の上に男性は『釈』女性は『釈尼』をつけていましたが、最近では男女差別につながるとのこともあり、男性も女性も『釈』をつけるケースが増えています。
天台宗のお墓には、決められた文字などがないため、『□□家之墓』と刻むことも、『南無阿弥陀仏』の念仏を刻む場合もあります。
文字については特徴はないですが、墓石と一緒に五輪塔を建立するのが特徴となっており、五輪塔には上から『空・風・火・水・地』が順に彫られています。
現在の真言宗の一般的なお墓のタイプは三段墓と呼ばれる形のものです。棹石・上台・下台の三段でお墓を組み立てます。
お墓の正面には『南無大師遍照金剛(ナムダイシヘンジョウコンゴウ)』と念仏を入れるか、『□□家之墓』の上に大日如来を表す梵字を刻みます。
浄土宗のお墓も浄土真宗と同様に、お墓の正面には『南無阿弥陀仏』の念仏か、『倶会一処』を使います。『□□家之墓』の場合は、その上に阿弥陀如来を表す梵字を入れるのが一般的です。
臨済宗のお墓も文字については特に決められてはいないため、『○○家先祖代々之墓』や『□□家之墓』が多いです。
また、『南無釈迦牟尼仏(ナムシャカムニブツ)』と書かれたお墓も多いです。
日蓮宗のお墓は正面に『南無妙法蓮華経』と念仏を刻むものが多いです。『□□家之墓』ならば、上部に『妙法』を加えて『妙法□□家之墓』とするのが一般的な日蓮宗のお墓です。
日蓮宗も五輪塔を建てることが多く、その場合は上から『南無・妙・法・蓮華・経』の順番で文字を刻みます。
和墓の場合は、竿石の側面か裏面に、故人の戒名や没年、俗名を刻んでいるものが多いです。
亡くなられた年齢を表す没年には、享年と行年があり、お墓に刻まれるのは一般的に享年(数えの年齢)が多いです。
俗名については、生前の煩悩を引き継ぐことになるとのことから、墓石には刻まないという地域や宗派も存在します。
建立者の名前や建立した年月日を入れます。竿石ではなく、へりくだって台石の左側に入れるのがいいとされていますが、台石が狭く、名前を入れるスペースがない場合は、竿石の左側側面か、裏面に入れます。
建立した日は『□年□月吉日』としたり、四十九日の法要や1周忌の法要を行った日にすることが多いです。
お墓にどんな文字を刻むかは基本的には建立する人の自由なのですが、和墓の場合は宗派や地域の慣習などによって、なかなか自由に選べないケースもあるようです。
しかし、洋墓のタイプは全く文字に制約や制限がないため、故人が好きだった文字や、建立する人が、未来の子孫へ残したいメッセージを選ぶケースが多いです。
よく選ばれているのは『絆』や『希望』の文字なので、お墓を通じて親族の絆を大切にしようとか、どんな世の中になっても希望を捨てずに生きようというメッセージを子孫に伝えたい気持ちが表れています。
字体や文字色についてのルールについて解説します。
同じ文字でも、書体によって受けるイメージが違います。墓石にどんな言葉を入れるかと同様に、どの書体を使って彫るかということも重要です。
墓石に文字を彫るのは、高い技術力が必要となるもので、以前は数種類の決められた書体の中からしか選ぶことができませんでしたが、最近の技術力の工場や、パソコンなどの進化により、様々な書体を選ぶことが可能となりました。
石材店などで書体の見本などを見て決めることがほとんどですが、自分が気に入ったものがあるならば、書体の名前を調べて石材店に伝えることで、ほとんどの書体に対応可能です。
墓石には一般的に正字を使用します。私達が普段使っている常用漢字の中には、点などを略した略字や俗字と呼ばれるものがあります。正字と言うのは漢字を略さずに正当に表した文字です。
例えば、普段よく使う『円』は略字で、正字だと『圓』です。また『灯』と言う字が『燈』と書かれているのもよく見かけます。
彫る時に特に注意しなければならないのは、文字の間違いです。
実際、間違えても、直すことはできるのですが、間違えた文字の部分を修正するのではなく、墓石の一面全体を研磨して、彫り直す作業を行いますので、無駄な費用や時間がかかってしまいます。
原稿が出来た時は、特に慎重に間違いがないか確認してください。
墓石に彫られた名前の中に文字が色つきのものを目にすることも多いですよね。
文字に色をつけるのは、目立たせるためとか、おしゃれのためではなく、文字色によってそれぞれ意味があるのです。
赤は仏陀の血の色を表します。血液が流れている、即ち生きていることを表すことにもなるので、生前に寿陵した人(お墓を建てた人)の名前は赤字にすることが多いです。
生前に建てた方が亡くなられた後、赤字は色を変えるか色が抜かれます。
白は仏陀の歯の色を表しています。悪行や煩悩を鎮める清浄を表す色で、文字色では最もよく見かける色だと思います。白文字は経年劣化で変色してしまうことや、汚れが目立ちやすいというデメリットもあります。
黒は仏陀の袈裟の色を表しています。侮辱やさまざまな怒りを抑えて耐え忍ぶという意味を持っています。黒文字は黒御影石などの黒い墓石に映えるので、こういった素材の墓石に使われているのが見られます。
黄色は仏陀の体を表す色です。確固とした姿の金剛を表しています。黄色の文字色のお墓はそれほど見かけませんが、金色の文字色は九州地方ではよく見かける色です。
青は仏陀の頭髪の色や静脈を表す色です。また、静脈を表す色とも言われています。
青色はお墓の色・形・位置を意識して建てられる吉相墓で使われることが多い色とされています。人相や手相などと同様に、墓相にも拘る方なら、青色はおすすめの色です。