お墓参りに行った時に、細長い木製の板が立てられているのを目にすることも多いでしょう。まだお墓が建っていない土地や、お墓の後ろや側面に立っていることが多いです。
この木の板は「卒塔婆」と呼ばれるものです。大切な故人様のために供養するためのものなので、意味を理解しておきましょう。
平安時代から鎌倉時代の卒塔婆は、現在のような木製の板ではなく、石で作られたものでした。卒塔婆自体が墓としての役割を果たしていましたが、時代と共に墓と別物になりました。現在では、卒塔婆は、故人の追善供養のために立てられています。
故人は、死後7日ごとに閻魔大王などの十王から審判を受け、地獄に行くか極楽に行くか決まるのです。7日ごとの審判は、7回繰り返して行われます。最後が亡くなられてから四十九日にあたる七七日目の審判となり、合わせて四十九日の法要が行われます。
生前に罪を犯していても、死後、子孫が供養をすることで罪が軽くなると信じられており、追善供養を7日ごとに行うのです。卒塔婆を立てることも、追善供養の1つと考えられており、故人の罪を少しでも軽くするために、お墓の後や側面に立てるのが習慣となっています。
亡くなった後は、すぐに仏となり極楽浄土に行けると考えられている浄土真宗には、追善供養の考えがないので、卒塔婆を立てないことが多いです。
木製の板の裏表、両面にはたくさんの文字が書かれています。宗派によって書かれる文字は多少異なりますが、一般的に書かれる言葉にはどのようなものがあるか見てみましょう。
・種子 十三仏信仰の仏様の1体の名前が書かれます。
・戒名 故人の生前の名前ではなく、僧侶から名付けられた戒名が書かれます。
・没年月日 故人が亡くなった日(命日)
・経文 お経の文章の1節が記されます。
・梵字 「空・風・火・水・地」5元素を表す「キャ・カ・ラ・バ・ア」を表す梵字が記されます。
・供養の日 卒塔婆が立てられた供養の日が記されます。年・月・日が書かれることもありますが、供養した「7回忌」「13回忌」など法要名が書かれることもあります。
お盆やお彼岸、七回忌や十三回忌などの年忌供養の法要に合わせて、立てるのが一般的です。早いときは、七十七日法要(四十九日法要)で立てられることもあります。
僧侶に文字を書いてもらうため、立てることを決めたら、まずは菩提寺の僧侶に相談をします。立てる時期と、本数を伝えて、文字を書いてもらいます。
お盆の時期は、依頼が多くなることも考えられますので、2週間~3週間には立てる旨を伝えておくようにしましょう。
初盆や年忌供養などで卒塔婆をたてる場合は、同時に供養の依頼を忘れずにしておきましょう。親族が集まるのであれば、その後の会食の席の準備も必要です。
文字を書いてもらった後に、僧侶には「塔婆料」を渡します。相場は3,000~10,000円くらいになり、白の封筒に入れて、表面には「御塔婆料」と書きます。
法要も行う場合は「お布施」もお渡しする必要がありますが、お布施と塔婆料は一緒にせずに、別々の封筒に分けて渡すのが一般的です。
お墓の後ろに卒塔婆を立てます。地域によって、立て方は異なるので気をつけてください。施主が1本立てる場合もあれば、参列者が1本ずつ立てる場合もあります。
追善供養のためのものなので、年忌供養や四十九日法要が終わったら、処分しても構いません。せっかく立てたのだから、そのままにしておく人も多いです。
処分する場合は、燃えるゴミとして出しても構いませんが、ゴミ捨て場に出すことに抵抗があるならば、墓のある寺院に持参して処分してもらうのがいいでしょう。